西オーストラリア、パース近郊のロッキンガム市にある中・高一貫校「Kolbe Catholic College」(以下、コルベ)取材レポートの最終回だ。これまで、同校のDirector of Innovation、萩原伸郎氏へのインタビューを中心にお届けしてきたが、今回は実際に学校内を見学させてもらいながら見つけた、学舎の姿について紹介する。

教室と校内の姿が変わった

コルベのキャンパスは日本の学校の姿とは異なる。1,100人を数える生徒は、時間割ごとに、緑あふれる中庭を取り囲むように配置された教科ごとの建物を回遊しながら日々の授業を受ける。数学や理科、英語、さらには演劇や音楽の授業を行うステージの建物などもある。

緑あふれるコルベのキャンパス。中庭の中央には境界がある。その裏には、日本庭園を造るプロジェクトが進行中だそうだ

この中で、図書館のスペースを訪ねてみた。

萩原氏は、生徒のiPad化に伴って、図書館の本を電子貸本サービスへ移行し、オープンスペースを拡げたと説明する。生徒はiPadからいつでも、何度でもその本を借りることができ、返却の手間もないという。学校は書籍のレンタルに応じて料金を支払う仕組みになっている。生徒が読みたい本にすぐアクセスできるようにする環境を整えること、蔵書の管理や新刊の取り寄せなどのコストを比較すると、非常にメリットが多いという。

そして、拡げられたオープンスペースには、生徒が自然に集まり、勉強している風景が広がっていた。校庭を走り回る風景も良いのだが、目的意識を持ってひとり、もしくはグループで学習をしている姿には、自分の中学時代と比較して軽い衝撃を受けた。教員たちも、休み時間や放課後にオープンスペースを周りながら、積極的に学生に声をかけているという。

図書館のオープンスペースの成功から、他の教科の建物にも、同様のオープンスペースを設け、教室内だけでなくこうしたスペースを使った授業のスタイルを実現している。テクノロジーによって、学校の校舎というファシリティの姿も自由度が高いかたちへと変わり、生徒の活用に合わせながら進化しているのだ。

休み時間の図書館の風景。iPadの教材で学習をしたり、グループで集まって課題に取り組んだりする風景が日常だという