「ACSIVE」の未来は福祉機器ではなく身近な装身具!?

また、歩き方をアシストしてもらえることで身体が覚えるのでイメージトレーニングもしやすくなるし、リハビリにおいてもトレーナーも指導した動きができているということを確認できるし、いいことずくめになる。そうして歩けるようになった度合いに従って、徐々にアシスト量を減らしていけば、最終的にはまた自分の足だけで歩けるようになるというわけだ(さすがに、ACSIVEを使っても完全に健常時の状態を取り戻すのは容易ではないようだ)。

そしてACSIVEのデザインに関してだが、佐野教授としてはまず、最終的には現在のメガネのように健常者でも装着して見たくなるような、ファッション性を持たせていきたいとする。福祉機器のデザイン面に関しては、障がい者の方々にとって、特に年配の女性はこうした機械的なものを身体に装着して目立ってしまうというのは苦手に感じる人が多いようで、だからといって地味にデザインするだけがいいかというと、そうではないと佐野教授はいう。もちろん、障がい者の方々が利用したくないようなカラーリングばかり揃えるのはどうかとは思うが、福祉機器としてばかり扱うことは考えていないとする。

話を聞いていて感じた佐野教授のすごいところの1つは、視野がものすごく広いところだ。実は、そのファッション性の話の中で、学生たちが遊んでいるのを見て知ったそうだが、そのデザインセンスにとても感銘を受けたものとしてネットワークゲーム「艦隊コレクション(艦コレ)」(画像22)の名を挙げてきたのには驚かされた。少女と軍艦という、一見するとそぐわないはずの要素を見事に融合させているデザインに感心したそうで、例えばヒールの部分がラダーになっていたりとか、とても勉強になったという。そのほか、ACSIVEの取り扱い易さの表現として、「ACSIVEはあたかもアムロがマニュアルをほとんど読まずにガンダムを動かせたように簡単に扱える点が大きいと思います」など、佐野教授はなかなか表現が面白いのが印象的であった。

画像22。艦隊コレクション公式サイトのトップページ。(c) 2013 DMM.com/KADOKAWA GAMES All Rights Reserved.

先述もしたが、佐野教授はACSIVEに関しては福祉での利用のみを想定しているわけではないので、もし学生が艦コレとのタイアップというような提案をしてきたら、それは「ぜひやりなさい」と勧めたいという。さらには、福祉機器の専門店のようなところにばかり扱ってもらうのではなく、これまた例え話だが、アップルストアのように若者にオシャレな店と認識されているようなブランドショップ、そのほかスポーツ用品店などにも扱ってもらいたいとした(一般販売がスタートした後には、高齢者のスポーツ支援用の器具としてスポーツ用品店で扱ってもらうことは、今仙技術研究所でも考えているという)。

さらに、佐野教授はACSIVEの福祉機器以外での使い方として、例えば高齢者のスポーツ・レジャー支援用として登山用途などを挙げる。本格的な登山をする場合、重い荷物を背負うと足腰が弱ってきている高齢者にはきついので、それをカバーして自分の足で登山できるようにするというわけだ。

そして、子どもたちのための歩き方教室で使うと行ったこともありだろうとする。世の中、大人も子どもも意外と正しい歩き方をしていない人が多いということで、歩き方が正しくないと、疲れるし身体にもよくない。そこでACSIVEに正しい歩き方を教えてもらうというわけである。ACSIVEの動きと合わない正しくないある方をしていれば、違和感が生じるわけで、それがなくなるように歩き方を修正していけば、正しい歩き方が身につくというわけである。

ちなみに、子どもたちにACSIVEを装着させるには、ベルトを工夫するといいそうだ。静岡の科学館で体験イベントを実施した際に、子供用のベルトがないので仮面ライダーベルトを利用することにしたところ、男の子も女の子も押すな押すなの大盛況だったそうである。

また2020年の東京オリンピックの際に、日本の技術のアピールでも一役を買いたいという。例えば、来日した高齢の外国人に、空港で飛行機を降りたところでレンタルを行うなど、日本ならではの技術による「おもてなし」などができれば、とする。余談だが、2020年の東京オリンピックでは、あつぎものづくりブランドプロジェクト「ATSUMO」と、神奈川工科大学(KAIT)が共同開発している160cmの大型ロボット「ロボコロちゃん」(画像23)が、世界初の2足走行によるロボット聖火ランナーを目指していることは先日紹介した通りだ

画像23。ロボコロちゃん。世界初の2足走行によるロボット聖火ランナーを目指している

筆者もACSIVEは健康増進にオススメだと思う。歩くことは何よりも健康にいいわけで、特に肥満気味の人は摂取するカロリーを抑えた上で、毎日せっせと歩けば1カ月で数kgずつは落ちていくので、とてもオススメ(筆者も経験がある)。しかし、肥満で体重過多の人たちはその歩くということが、運動不足で筋肉が衰えていて苦手だったりする。そこで、最初はACSIVEでアシストしてもらって楽に歩くことから始めるというのでも良いのではないかと思うが、いかがなものだろうか(さすがにそれで15~20万円を出すというのは高額なレベルなので、夜中の通販番組で紹介されているようなエクササイズマシンぐらいの価格になるのが望ましいと思われる)。