OCZは、COMPUTEXの会場近くのホテルにプライベートブースを設け、新製品の展示を行っていた。昨年は南港にブースを構えていたが、今年はプライベートブースでの参加となった背景には、昨年末の東芝によるOCZ買収がある。プライベートブースという静かなスペースで、顧客に対し東芝傘下となった新生OCZの状況をじっくり説明するためでもあるとのことだ。

さて、そこでOCZは、新SSD「Vector 180」を紹介していた。大きな特徴はキャパシタを基板上に搭載している点だ。例えば、キャパシタの無いSSDでは、SSD上のDRAMキャッシュからNANDフラッシュメモリへの書き込み処理を行っている最中に何らかの事故でPCの電源が落ちてしまうと、書き込みが完了していないデータは失われてしまう。一方、キャパシタが搭載されていれば、これが電池の役割を果たし、わずかな時間だが外部の電源状況に依らずNANDフラッシュへの書き込み処理を続けることができる。

新製品を説明してくれたのはOCZのアジア担当マーケティングディレクターのAlan Chang氏。Alan氏は、東芝買収前の、旧OCZ時代から、発表会などでよく来日していた同社おなじみの人物。そのほか日本市場に関わるスタッフなど新生OCZになっても変わらない。ただし今回の会場にはコンシューマのエントリー向け製品の展示は無く、このあたり東芝製品との住み分けの方向性が見えてきたのかもしれない

キャパシタを搭載するSSDはエンタープライズ向けではよく見かけられるもの。最近では、データセンター向け製品をベースとしたエンスージアスト向けモデル「Intel SSD 730」が同様にキャパシタを搭載していた。ちなみに、Intel SSD 730では一般的な筒型キャパシタを2基搭載しているが、Vector 180シリーズはチップタイプのキャパシタを採用している。

基板のみの展示だった「Vector 180」。基板上で赤く目立つキャパシタが目印。インタフェースはSATA 6Gbps

インタフェースはSATA 6Gbpsで、コントローラはIndilinxのBarefoot 3 M00。転送速度で、最大550MB/secというのは従来モデルのVector 150シリーズから大きく変わるところはない。一方、NANDフラッシュメモリは東芝製の第2世代19nmプロセス「A19nm」で製造したものを採用。A19nmは、従来の19nmからさらにチップサイズを縮小し、コスト最適化を行ったとされるプロセスだ。また、A19nm品採用の効果なのか、Vector 180の最大容量は960GBへと拡大している。

Vector 180の主な仕様。基本的にはVector 150にキャパシタを追加し、NANDフラッシュのプロセスが19nm→A19nmへと進み、大容量モデルを追加

ほか、エンスージアスト向けにはPCI Express接続の「RevoDrive 350」も展示されていたが、M.2やSATA Expressといった次世代インタフェースの製品についてはまだ見ることができなかった。開発していないということは無いだろうが、普及のタイミングを見極めているようである。

PCI Express接続のSSD「RevoDrive 350」とRevoDrive 350×2台のRAID 0構成デモ機。後部にブロワーファンが装着されていたが、これはケースファンの無いまな板で組んだために、スタッフが急遽とりつけたもの

なお、ブースにはRevoDrive 350 120GBモデルを2台搭載し、RAID 0を組んだデモ機が動いていた。M.2がいくら速くても、複数台で組むRAID 0に比べれば遅い(M.2はまだ多くのマザーが1スロットしか搭載していない)。デモ機ではATTO Disk Benchmarkでリード/ライトが最大3.8GB/sec、AS SSD Benchmarkではリードが最大2.5GB/sec、ライトが1.7GB/sec、CrystalDiskMarkでもリードが最大1.7GB/sec、ライトが最大2GB/secという圧倒的なスピードを示していた。

RevoDrive 350×2台による各種ベンチマークの結果。爆速を求めるならM.2よりも従来型のRAIDの方が(コストは高いが)断然速い

なお、現行のVactor 150は、買収完了を受けて新生OCZのロゴを用いたデザインに切り替わるとのこと