国土地理院は6日、東京・大手町の日経ホールにおいて、研究活動や成果を報告する「第43回 国土地理院報告会」を開催した。会場内では「地理院地図3D展」も併催され、地図の3Dデータを使ったさまざまな試みが紹介された。
「平面的な地図は分かりづらい」の声から生まれた3D地図サービス
2014年3月20日より、国土地理院は私的利用に限り無償で利用可能なWeb地図サービス「地理院地図 3D」を提供している。これは、Webブラウザ上で手軽に日本全土の立体地図を表示できるサービスで、表示した3Dデータの回転操作や拡大縮小に加えデータのダウンロードも可能だ。
3DデータはSTLやVRMLなどの形式で保存でき、私的利用であればユーザーが3Dプリンタを使って立体模型を作成することもできる。報告会では、そのサービス概要や3D表示の仕組み、活用事例などが紹介されていた。
併催された「地理院地図3D展」は、「地理院地図 3D」を使ったさまざまな試みを紹介するもので、会場では実際に3Dプリンタで出力された立体模型のサンプルが多数展示されていた。
地理院地図 3Dの担当者である国土地理院の大木章一氏に話を伺ったところ、「地理院地図 3D」は東日本大震災がきっかけになって取り組んだサービスとのこと。
「震災後に現地に入った際、等高線などで平面的に表現した地図は分かりづらいという意見をいただきました。そこで、なんとか立体的に地形を見ることができないかということで取り組み始めたのです」(大木氏)
ちなみに、「地理院地図 3D」はブラウザ上で地図を立体表示するためWebGLを採用している。
「プラグインなどを利用するのはセキュリティ的な問題で敷居が高かったのですが、WebGLならWebブラウザの標準機能だけで立体表示できます。西之島が噴火した際に災害対策として初めて利用してみたのですが、それが今回の地理院地図 3Dにつながりました」(大木氏)
なお、地理院地図 3Dの対応ブラウザはInternet Explorer 11、Google Chrome、Firefox、Safari。MacOS向けSafariでは、環境設定からWebGLを有効にする必要がある。
3Dプリンタを使った実演デモも実施
なお、会場では、XYZprintingの3Dプリンタ「ダヴィンチ 1.0」と「地理院地図 3D」を使った立体模型作成の実演デモも行われていた。
ダヴィンチ 1.0を使用したのは「(実勢価格が6万円台となる)導入コストの低さや使い勝手のよさなどを総合的に判断したから」とのこと。材料のフィラメントが比較的安価に入手できるのもメリットだそうで、会場には同機で作成したサンプルも数多く展示されていた。
こうした立体模型は、災害対策や行政の住民説明のほかにも、インフラ管理や設計・施工、観光みやげなど、さまざまな用途が期待できるという。
大木氏によれば、「将来的には国内だけでなく世界の立体地図データも提供していきたい。ビジネスはもちろん、個人の方のホビー用途にも役立てていただければ。Webブラウザの標準機能で手軽に閲覧できるので、ぜひ一度試してみてほしい」とのことだ。