河畔に出ると、絵画のような風景が広がっていた。広々と流れるネッカー川にはレガッタの艇が滑るように走り、ドイツ国旗を掲げた遊覧船のデッキでは、乗客がランチを楽しんでいる。向こう岸の公園では子供たちが走り回り、その背景には、おとぎ話のような茶色い屋根の家々が立ち並ぶ。
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交差点で信号待ち。絞り優先オート F2.8(原寸大画像を見る) |
やがて、カール・テオドール橋が見えてきた。その名は1788年、カール・テオドール選帝侯が建設したことに由来する。詩人ゲーテも恋人と歩いたといわれる歴史的な石橋だ。一度、カフェやレストランが軒を連ねる旧市街に入り、ぐるりと回り込むように橋門正面に出る。
さすが有数の観光地、日曜は軒並み商業施設が閉まってしまうドイツにあって、ここではほぼすべての店が営業中。春の日差しのもと、多くの人々が沿道のテーブルでビアジョッキを傾けている。見ているだけで喉が鳴る風景だ。
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スライドパノラマでカール・テオドール橋を撮影。想像以上にキレイなパノラマ(原寸大画像を見る) |
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有名なチョコレート店「knosel(クネーゼル)」をHDRアートで(原寸大画像を見る) |
精霊教会前の広場には、たくさんのオープンテーブルが。どこからどこまでがどのレストランなのか、まったく分からない(原寸大画像を見る) |
橋門からカール・テオドール橋の上では、世界各国の観光客が記念写真を撮っていた。おじさんがバイオリンで奏でる「ある愛の歌」、物悲しい旋律がなんともロマンチックだ。なぜに私はただひとり、こんなところにいるのだろう…。
このまま川を渡ると「哲学者の道」へと至るが、残念ながら今回は時間がない。後ろ髪を引かれるように引き返し、旧市街のマルクト広場に出る。マリア像を仰ぎ見ると、その肩越しにハイデルベルク城の城壁が見えた。
小高い丘にそびえる13世紀の城砦。幾多の戦乱を経たであろう荒々しい姿をフレームに収め、その遙かな歴史ロマンに思いを馳せたところで、散歩の時間もEX-100のバッテリーも終了。満充電から撮影した枚数はおよそ250枚(プレミアムブラケティング含む)だった。正直、もう少しもちこたえてほしいところではあるが、プレミアムブラケティングや動画撮影をそれほど使わなければ、撮影可能枚数はもっと伸びるだろう。
と、当日を振り返りつつ、今この原稿を書いていても、あの美しいハイデルベルクの風景が生き生きと、特別な臨場感をもって蘇ってくる。それは取りも直さず、EX-100の画質とフットワーク(取り回しの良さ)の絶妙なバランスによるものだとあらためて思うのだ。撮りたいと思った被写体にさっとレンズを向けられるコンデジは、旅先でもやっぱり強い。
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アートショットの「宙玉」(そらたま)。まるで、旅の思い出が詰まったカプセルのよう(原寸大画像を見る) |