テクノロジー活用の2つの切り口
詳しくは本連載の次の稿で紹介するが、毎年米国・テキサス州オースティンで開催される教育とテクノロジーに関連するイベント「SXSW Edu」を視察しているデジタルハリウッド大学大学院特任教授、佐藤昌宏氏によると、トレンドは「いかにテクノロジーを教育に生かすか」から、「テクノロジーを前提に教育を組み立てる」という方向へシフトしたという。
つまり、これまでは教育にテクノロジーを取り入れることが新しく、興味の中心となっていたが、今後はテクノロジーが当たり前となり、テクノロジー以外の制度や評価、教授法などを新たに組み立てていくかに注目されるようになったということだ。
ここで、テクノロジーと教育に関して、2つの切り口を提供したい。それは、「デジタルで学ぶ」と「デジタルを学ぶ」だ。
前者は、これまで紹介してきたような、テクノロジーを教室や家庭、個人の学びにいかに取り入れるか、というツールと環境の話だ。ツールと言っても、デバイスだけに留まらず、こうしたデバイスで利用するアプリや、様々な環境からアクセスするプラットホームやクラウドツールも、含まれる。
そうすると、黒板や教科書、ノート、鉛筆をデジタルツールに置き換える、というタイプのデジタル導入だけでなく、時間の使い方から教育ツール全般に至るまで、どのように学びを構成するか、という議論になってくる。その理由が、今年のSXSW Eduで焦点となっている「テクノロジーを前提に教育を組み立てる」という議論になる。
もう1つの「デジタルを学ぶ」という切り口は、コード教育のトレンドだ。テクノロジーをツールとして利用するだけでなく、テクノロジーそのもの(ソフトウエア、アプリ、ウェブサービスなど)を自分で作れる能力を身につけようというアイディアだ。
米国ではコンピュータサイエンスの授業としてプログラミングに取り組んでおり、またcode.orgはコード教育の啓蒙活動を行っており、Codeacademyなどのコード学習が行えるサービスや、iTunes U、Udemyといったオンラインコースのプラットホームでも、多数の教材が配信されている。
インターネットやモバイルのテクノロジーが普及している中で、こうした環境で利用できる新しいアプリやサービスを作ることができる人材は不足しているが、非常に求められているのが現状だ。コードを学ぶ全ての人がエンジニアになる必要はないが、エンジニアとコミュニケーションが取れる、コードを心得た人材が広がることは、ビジネスだけでなく様々な分野のイノベーションを加速させると考えられている。
日本でも、民間でコード教育を行う事業がEdu Tech分野の中心的な存在として増え続けている。