スイスのバーゼルで開催されたウオッチ&ジュエリーの祭典「BASELWORLD 2014」にて、「時の同期」をテーマに2つのコンセプトモデルを提示したカシオ。その、世界初のGPSハイブリッド電波時計G-SHOCK「GPW-1000」と、同社アナログウオッチ初のBluetooth 4.0(Bluetooth Low Energy Wireless Technology)対応EDIFICE「EQB-500」が注目を集めたことは既報の通り。
そこで今回は、BASELWORLD会場にて行った、カシオの時計事業におけるキーマン、増田裕一氏へのインタビューを掲載する。2つのコンセプトモデルが意図するもの、そしてその先に見据える時計像とは?
アナログ市場でオンリーワンなメーカーに
「SYNCHRONIZED TIME PIECE」のテーマのもと、カシオブースの中心にディスプレイされたコンセプトモデル |
今年は、カシオが時計事業を始めて40年の節目に当たる。40年の歴史のうち、前半の30年間、カシオはデジタル時計の開発に資源を集中してきた。その結果、デジタルのカシオ、多機能のカシオというイメージが固定化されたのは、読者諸氏もご存じの通りだ。
しかし、こと腕時計市場の全体を俯瞰すると、その大半はアナログ時計が占めている。数量ベースで8割、金額ベースでは(アナログ時計は販売単価が高いこともあって)9割以上を占めるとさえ言われている。直近の十年で、カシオがアナログ時計の開発に大きく舵を切ったのは、事業として必然だったと言えよう。ちなみに、この10年は、カシオの高級アナログ時計ブランド、OCEANUSの歴史と重なっている。
とはいえ、アナログ市場では、すでに伝統のスイスブランドをはじめ、大手国内メーカーが大きな存在感を示していた。カシオの入り込む隙間はないに等しかったと、増田氏は振り返る。
増田氏「私たちのような後発メーカーが、他社を同じような製品で追いかけても仕方ありません。そうではなくて、自分たちの確固としたポジションを作らないと生き残れない。それはすなわち、アナログ市場でオンリーワンなメーカーになることです。」
カシオならではの独自性をどうやって明確に打ち出すか。増田氏がたどり着いた答えは、やはり得意のデジタルの中にあった。