アジア人でも片手でホールドできつつ「見やすさ」を追求したサイズ

ThinkPad 8のディスプレイがなぜ8インチなのか、なぜWQXGAなのかという点は、テイ・イ氏が説明してくれた。ビジネス向けにちょっと大き目な液晶で高解像度を、といったぼんやりとしたコンセプトは想像がつくが、実際にこれを組み込むとなると、いろいろと条件や壁があって難しかったという。

ThinkPad 8のハードウェア面での特徴のひとつが8インチクラスの液晶画面とWUXGA(1,920×1,200ドット)という解像度だ。テイ氏によると、8インチクラスのタブレットでは、8.0インチパネルが採用されることが多いが、ThinkPad 8では、あえて8.3インチパネルを採用している。しかし、大きな画面を採用した場合、当然、そのままではタブレットの本体サイズも大きくなってしまう。

ThinkPad 8の開発段階では、片手で持てることが重要視されていた。比較的手の大きな欧米人だけでなく、例えば手のひらの小さなアジア人でも片手で持てるサイズを目指したそうで、それをもとに、まずタブレット本体の横幅を135mmクラスに収めるということを真っ先に決定した。さらに、16:9アスペクトは縦長すぎて使いづらいというユーザーの声から、短辺が1,080ドットではなく1,200ドットのWUXGA解像度が決まった。しかし、高解像度パネルではppiが小さいため、出来る限り大きくしたいという要望から、8.3インチの液晶パネルの採用が決まったとのことだ。そうなるともちろん、液晶パネルの幅が本体の横幅135mmクラスの実現を難しくしてしまうわけで、ベゼルをとにかく狭く設計する必要が生じた。先のクイックショットカバー用の磁石のスペースも確保しなければならないので、ThinkPad 8のベゼル部分の実装はとにかくタイトだ。

片手で持てるサイズということで横幅135mmクラスが決定。狭縁LCDで8.3インチでも132mmの本体幅を実現できたと言う。また、ThinkPadの生産性重視というコンセプトから、情報量の向上、可視性の向上という観点でWUXGA解像度が採用された

レイアウトの工夫はもちろん、液晶パネルを制御する基板も、サイズの縮小が求められた。さらに、基板のサイズが小さければ小さいほど、そのぶんバッテリを大きくすることもできる。ちなみに、縦のサイズが当初13mmあった制御基板は、最終的に10mmまで縮小し、余った3mm分、バッテリーにスペースをまわすことを可能にした。こういったミリ単位での調整の積み重ねが、ThinkPad 8の使いやすいサイズを実現しているのだ。

液晶パネルの制御基板も、フラット構造の場合は13mm幅必要だったところ、折り返す構造を採用することで10mm幅に削減し、そのぶんバッテリーの大型化が可能となった

そのほかにも随所にThinkPad 8専用設計

メイン基板も同様だ。ThinkPad 8の開発に際し、大和研究所ではインテルと協業することで、CPUとメモリを中心に高密度配線技術を確立した。分解モデルではメイン基板の高密度配線を実際に目にすることができた。現行のモバイルノート製品のメイン基板と比べてもはるかに高密度にチップが搭載されている。Bay-Trail自体が省電力で、電源回路部分を小さくすることができたという部分もあるが、レノボが海外ではスマートフォン製品なども手がけている関係で、大和研究所にスマートフォン開発の技術蓄積があったという部分も影響している。実際、ThinkPad 8の高密度実装は、パソコンというよりはモバイル機器に近い印象を受けるものだった。

ThinkPad 8のメイン基板。比較対象が無いため分かりづらいかもしれないが、ThinkPad 8の横幅とほぼ同じなので約132mmと想像いただきたい。中央にあるCPU左側など、部品と部品との間がとにかく密で、基板そのものが露出している部分は固定のための四隅のスペースや左右を繋ぐブリッジくらいだ

また、何気なく搭載されているUSB 3.0 micro Bコネクタも、単なるUSBコネクタをそのまま実装しているわけではない。そのまま実装しただけでは、何かしらの衝撃を与えた際、コネクタ部分に力が加わり、基板から剥がれてしまうなどの破損も考えられる。そこで、周囲にはコネクタを囲むブラケットを配置し、強化を図っている。同時に、コネクタを挿した際には、ある程度のアソビも残されている。あまりにもガッチリと固めてしまうと、むしろ破損の可能性が高まるからだそうだ。持ち運び前提のタブレットならではの工夫だろう。

忘れてはならないのが"大和研究所名物"の耐久性テスト(通称:拷問テスト)。写真中央上のように、本体が曲がってしまうような圧迫テストも実施している。ノートPCと比べても圧迫や落下の危険性が増すタブレットだけに、こうした耐久性テストをクリアしているのは心強い

スペックだけでなく、「使い勝手」とそれを実現する技術がThinkPad 8の魅力

国内ではとくに盛り上がりを見せているBay-Trailタブレットだが、ThinkPad 8はとくにハイエンドなスペックが海外でもウケており、需要が供給を上回っている状態が続いている。レノボの開発陣も予想以上という状況だ。CPUや8.3インチのWUXGAパネルというスペック面がまずおもてに出る部分ではあるが、今回お聞きした表面からは見えてこない細部へのこだわりも、BYODを睨んだ次のThinkPadファンを増やすきっかけになることだろう。