IoTへの取り組みを加速、Windowsライセンスの無料化も

さらに、マイクロソフトは、IoT(Internet of Things)用のウィンドウズ「Windows for IoT」を発表した。これは、Embedded Windowsの1種と思われ、GUI部分などを外したWindowsで、初代Pentium(低価格向けのCPUのほうではなく、最初にリリースされたP5アーキテクチャのPentium)程度の性能しかない、Intel Quarkで動作デモを行った。Quark系は、最近のCPU拡張機能を持たないものの、高速な32bit CPUとして動作し、1980年台後半にはLinuxを動作させる程度の性能があった。このため、GUIを含まないWindowsであれば、現在のカーネルでも十分動作可能だろう。

このWindows for IoTについてはライセンス料をゼロとし、普及を狙う。無料なのは、OEMに対するライセンス料なので、エンドユーザーが自由にダウンロードしてインストールできるわけではなく、原則、IoTプロセッサの評価ボードに付属したり、IoTプロセッサを購入するハードウェアメーカーにプロセッサメーカー経由で提供されることになると思われる。

また、同様にマイクロソフトは、9インチ以下のスマートフォンやタブレットで動作するWindowsとWindows Phoneのライセンス料をゼロにすることも発表した。ただし、これもOEMメーカーが支払うライセンス料の話で、エンドユーザーがタダでWindowsを入手できるわけでもインストールし放題になるわけでもない。おそらく現在と同じくパッケージや利用ライセンスを購入して利用契約を交わして利用することになると思われる。

IoT for Windowsと9インチ以下のスマートフォン、タブレット用のWidnows Phone、Windowsは、ライセンス料がゼロに

ただ、このために、9インチ以下のタブレットやWindows Phoneのコストが大きく下がることが予測される。昨年ぐらいにインテルは、タブレットの低価格化により大量出荷が可能になるといった予測を株主向けに説明していたが、それには、こうした背景があったのだろう。現在でも8インチタブレットは、3万円を切る価格で販売されているが、機種によっては、2万円前後、世界的には200ドル程度にまで下がることが予想される。また、Windows Phoneの場合、事業者の販売価格で150ドル程度にまで下がっていたが、これも場合によっては最初から100ドル以下にできる可能性が出てきた。ただ、無料のものにこれまでどおりのサポートが行われるとは考えにくいため、別途サポート料金などは必要になるのかもしれない。また、8.1や8.1 Update 1に関しては、既存の製品の延長となるため、特にサポートは必要ないかもしれないが、今後の新しいWindowsで、たとえばデバイスドライバのモデルが変わるような大きな変更があったときに、対応できるのかどうかは、OEMメーカーの技術力次第だ。

ノキア社CEOのスティーブン・エロップ氏。かつてマイクロソフトに所属していたため、買収で古巣に戻ることになる。NOKAIの端末部門とMicrosoftの統合はまだ完了していないが、基調講演では、Windows Phone 8.1搭載予定の端末を紹介

実際、アンドロイドなども、Googleサービス用アプリのライセンス料がかかる程度でアンドロイド本体はオープンソースなのでライセンス料なしで利用できる。また、iOSの場合、自社開発なので、他社にライセンス料を払うこともない。Windows Phoneもようやく同じ土俵に立ったといえるだろう。ただ、マイクロソフトはNOKIAの端末ビジネスを買収し、Windows Phoneでもデバイスビジネスに参入する。PCは、すでに大手PCメーカーが存在していてマイクロソフトといえども大きな存在ではないが、Windows Phoneは、もっともシェアの高いLumiaシリーズがマイクロソフトの製品となり、他社はこれを追いかける形となる。ライセンス料の無償化は、OEMに対する配慮であり、参入を促すための手段なのだろうが、順調に市場が成長しない限り、離れていくOEMが出てくることになるだろう。もっとも、マイクロソフトとしては、端末ビジネスに参入したわけだし、それはそれでかまわないのかもしれない。ライセンス料の無償化は、OEMメーカーにとっては「諸刃の剣」なのかもしれない。

基調講演の最後には、マイクロソフトの新CEOとなるサティア・ナデラ氏が登場。ビデオ録画された質問に答える形でマイクロソフトの方向性を説明