得てして、「最近の若い者は…」などという言葉もよく聞かれてしまうわけだが、今回参加している子供たちを見れば、「最近の若い者はこんなにしっかりしているのか!?」となるのではないだろうか。自分の若い頃を思い出すと、こんなにしっかりしてなかったよなぁ…と苦笑いせざるを得ない。
しかしその一方で、最近は、若者が夢を持ちにくい、というのもまた事実のようだ。筆者も子供を育ててきた経験からすれば、小学校の頃から「将来なりたいものは特にない」という具合で、高3の時点でも、なりたいものを探すための時間を延長するということで大学へ進学したという具合であった。
こうした若者が夢を持ちにくいというのは、よく日本の社会情勢のなせる閉塞感のせいだとか、インターネットなどのメディアなどによる情報過多のせいだとかいろいろと理由はあるのだろうが、どちらにしろ、社会の中核を担っているような筆者のような世代が「大人になることは楽しいんだよ、みんなにはいろいろな可能性があるんだよ」というのを若者に見せてあげられていないのも事実だろうとは思う。
なので、どれぐらい10代の子たちがこの記事を読んでくれているのかはわからないが、意外となんとかなっちゃうよ、諦めなければなりたいものになれちゃったりするよ、という実例を1つ(宇宙飛行士だとか、相当努力しないとなれない大変な職業もいろいろとあるわけだが)。一番よく知っている実例といえば、筆者自身のことなので、ちょっと恥ずかしながら自分のことを振り返ってみたい。
筆者は文章を書くのは小学校の頃から好きで、中学生の頃には漠然と作家になりたいというのが少しだけあって、面白い小説やマンガなどの作品に出会って、それを強く意識するようになったのが高校の時だ。できれば作家、作家が無理でも少なくとも物書きの類、できれば自分が好きなジャンルのライターになりたいという想いは高3の時点で意識していたと思う。
が、当然のことながら必ず作家になれる大学なんてあるわけないし、四半世紀も昔の話なので、今みたいに作家だとかマンガ家だとかのクリエイター志望者のための専門学校なんてなかった(知らなかっただけかも知れないが)わけで、結局、大学も専門学校も行かず、最終的にはたまたま愛読していた、今は亡きとある老舗のPCゲーム雑誌で編集アシスタント募集の案内を見て応募。運良く雇ってもらえたというのが、物書きの仕事のスタート地点だ。その後、サラリーマン編集者とかゲーム会社の広報兼マニュアル制作兼ゲーム制作とかも経験しつつ、独立してフリーライターとなり現在で15年目。ゲーム系に始まって自動車やレース、IT、アニメとかいろいろとやって来たが、ここ5~6年は、ずっとなりたかったサイエンス系の仕事をやらせてもらえるようになった、という具合で、末席も末席ながら、やっと40過ぎてから念願のサイエンスライターを名乗れるようになったというわけだ。
もっとも、今のところ作家になるという夢は叶えられてはない(ちなみに諦めてはいない)が、憧れていたサイエンスライター(鹿野司先生が憧れ)になれたので、諦めずに時間をかければ好きな仕事にたどり着けるよという、小物で申し訳ないが、実例の1つとして伝えられればと思う次第である。全然正統派ではなく、不格好で裏道的ではあるが、諦めなかったのと運のよさで、ここまで来られたと思うわけである。
もし、自分にほかの人より少しだけサイエンスライター向きの素養があるとしたら、文章を書くことが好きなことと、サイエンスが好きで幅広く多少なりとも知識があるというところだろうか。ちなみに、サイエンスライターは頭がよくないとなれないかというと、そうでもない(笑)。その最大の証拠は、今、まさに読んでいただいているこの文章。頭がいい人の文章ではないのがわかるはずだ(苦笑)。
なので、この分野なら誰にも負けない、という知識量を誇れるものがあって、なおかつ文章を書くのが好き、という人なら実は誰でもライターになれてしまうのだ。あとは、その記事を書かせてくれる媒体や出版社などを見つければいいだけである(近年のサイエンス分野はそれが一番簡単ではないのは、雑誌やWebの媒体を調べてみればお分かりいただけることだろう)。
というわけで、自分の経験談も後半は随分と入れさせてもらったが、若い子たちの可能性の幅を広げてあげるというイベントはすばらしいなぁ、と感じた次第だ。意義のあるすばらしいイベントだと感じたので、ぜひこうしたイベントについては今後も継続して取材していきたいと思うところである。
また前述のように、3月21日から24日まではいよいよ「第3回 科学の甲子園全国大会」が開催される。こちらの方は、マイナビニュースでは宇宙開発系の記事を中心に活躍されているサイエンス・テクノロジー系のライター仲間の大塚実氏がレポートしてくれる予定なので、楽しみにお待ちいただきたい。