しかし、もし日本でGoogle Glassが発売されたとして、すぐに思い浮かぶハードルが二つあります。一つは音声による操作です。英語で操作はまずムリなので、日本語に対応してくれるのが前提条件ですが、だとしても「オーケー、グラス。写真を撮って」なんて村上春樹の小説みたいなセリフを言うのは知っている人の前でも恥ずかしい。どれくらい小さな声まで反応してくれるのかにもよりますが、ちょっと外では使う度胸がありません。メガネのツル部分でタップやフリックのような操作もできるらしく、こちらのほうがまだ現実的ではありますが、文字入力までは難しそうです。

もう一つはカメラの問題。Google Glassをかけている人が近くにいたら、いつ何を撮られていてもおかしくないわけです。ケータイのカメラはシャッター音を強制的に鳴らすことで一応はその問題を回避したことになっていますが、Google Glassは公表されているスペックを見る限りスピーカーは搭載されていないようです。さらに「ハングアウト」という機能では見えているものを他の人とリアルタイムでシェアが可能。録画中を示すライトは一応あるらしいのですが、このサイズなので近くで確認しなくては分かりにくそうです。先日、米・シアトルでGoogle Glass着用での入店を拒否したレストランのことが報じられていました。日本なら、Google Glassを使っているだけで盗撮犯と言われるような、極端な話も出ないとは限りません。

音声操作については、黙って使えるようにする工夫が欲しいところです。PCでマウスを使うように、スマホ本体をコントローラにしてフリックや3軸センサーで操作したり、あるいは、Bluetoothで繋がる500円玉くらいのトラックパッドが付属してもいいかもしれません。カメラの方は、分かりやすくレンズを隠せるカバーなどがあれば大丈夫でしょうか。デザイン的には望ましくなさそうですが。

まあ何とかしてハードルを超え、日本でGoogle Glassが普及した日には、スマホを使う人たちの様子も一変して……いや、どうでしょう。今どき電車に乗ると座席に座った人たちがズラッと並んで同じようなポーズでスマホの画面をにらんでいるわけですが。これがGoogle Glassになったところで、みんなズラッと並んで同じようなメガネをかけ、数メートル先の宙に焦点を合わせた目でツルをチョイチョイいじっていたりすることになるのでは……。たとえスマホがどんなインタフェースになったとしても、自分にだけに見えているモノに夢中になっている人を端から眺める時の変な感じは、ぬぐい切れないものなのかも知れません。