東京工業大学(東工大)は12月9日、40Vの低電圧で1cm2当たり140W冷却することができるチップ状の冷却装置「Closed-Channel Cooling System(C3S)」を開発したと発表した。

同成果は、同大 異種機能集積研究センターの大場隆之特任教授によるもの。東京大学、大日本印刷、PEZY Computing、WOWアライアンスと共同で行われた。詳細は、12月9~11日に米国ワシントンD.C.で開催される「International Electron Device Meeting(IEDM)」にて発表される。

電子機器の発熱は不可避で、特にMPUなど大規模集積半導体は1cm2当たり100W以上にのぼり、これを並べると一般的なホットプレートの発熱に匹敵する。うまく冷却できないと温度上昇で信頼性が低下し、また機能が劣化する。これまでは放熱板や外部からの強制冷却などが利用されてきたが、発熱が大きくなるにしたがい大型化し、冷却機構を後付するため、携帯性が悪く生産性が向上しなかった。また、機械的故障がない電気浸透流の原理を利用したポンプは、1000Vといった高い電圧が利用され、これは半導体の電源電圧の100倍以上であり半導体応用の障害になっていた。

研究グループは、半導体微細化技術とウェハプロセスを応用することで電気浸透流の駆動能力を大幅に改善し、40Vで1cm2当たり140W放熱できることに成功した。同技術では、シリコン基板の厚さをあらかじめ薄くし、上限配線にはシリコン貫通電極(Through Silicon Via:TSV)法を用いた。

WOW(ウェハ・オン・ウェハ)プロセスと組み合わせることで、冷却機能が搭載されたプロセッサを一貫したウェハプロセスで製造することが可能となり、低コスト化が実現できる。冷却機構を直接デバイスに搭載することができると、冷却装置は100μm以下の厚さとなり、小型化が著しいモバイルなど携帯端末にも応用できるとコメントしている。

EOF駆動冷却装置と広帯域デバイスへの応用

微細加工技術とウェハプロセスで今回作製した冷却装置。小型化した EOFを多段化し冷却水の駆動力を向上することに成功した

冷却能力と電圧の関係。今回、40Vで140W/cm2放熱できることが検証された