Microsoftは以前から、音楽コンテンツに対する多角的なアプローチを行ってきた。Windows Media Player 7時代は、メディアガイド機能やインターネットラジオを楽しめる機能を搭載し、幅広い利用方法を提供している。同社のコンシューマーゲーム機「Xbox 360」には、Xbox Liveというオンラインサービスの一環として、2012年10月から「Xbox Music」を提供開始。現在は世界22カ国において、ストリーミングラジオやストリーミング再生といった音楽を楽しめる統合サービスだ(図01)。

図01 「Xbox Music」のイメージ。当時のWindows 8マシンやWindows Phoneも並んでいる

図02 11月28日に開催された「New Windows Media Briefing」

Xbox Musicは当時発表されたように、Windows 8やWebサイト版も用意されている。しかし、日本国内からアクセスすると、「Sorry, Xbox Music isn't available in your region just yet.」というメッセージが現れ、サービスを利用することはできない。日本在住の場合、Xbox Musicを楽しむことはできなかったのだが、11月28日に日本マイクロソフトは、「New Windows Media Briefing」と題した記者向け説明会にて、Xbox Musicの日本国内向け展開を発表した(図02)。

同サービスは、Windows 8.1標準搭載のWindowsストアアプリ「ミュージック」をそのまま利用するが、Xbox Musicで展開しているサービスのうち、国内で利用できるのは「Xbox Music Store」のみ。広告付きで音楽が無料配信される「Free Streaming」や、有料配信の「Xbox Music Pass」は、今回の発表時点では未定だ。もっとも無料ストリーミングサービスは、南米や北欧の一部でも未提供のため、今後の展開を期待したい(図03)。

図03 Xbox Musicに対応した「ミュージック」。わずかだがデザインが変更されている(画像は開発段階のものであり、サービス開始時に変更する場合がある)

さらに今回の発表で注意しなければならないのは、サービスローンチ時期が未定という点。現在、Xbox Musicは全世界で約3,000万曲を配信しているが、そこに加わる邦楽の種類や楽曲数は未発表だった。また、その約3,000万曲もサービス中の各国ですべて購入可能ではないため、日本国内から利用する際、どの程度の楽曲数になるかも明かされていない。楽曲は150円から250円の価格帯で販売され、ユーザーはMicrosoftアカウントに登録したクレジットカードや、Windowsストアギフトカード、Xboxギフトカードで購入する(図04)。

図04 Xbox Musicのサービス内容。動作環境や価格、購入方法などは日本向けだが、配信楽曲数はカウントしていない(国内展開の開始時)

図05 Xbox Musicのデモンストレーションを行った日本マイクロソフトの井上正之氏

楽曲のファイル形式は320kbpsのMP3フォーマットだが、DRMフリーなど一部の楽曲はビットレートが異なる場合があるという。

一見すると、同じMicrosoftアカウントでサインインすれば、異なるデバイスでも購入した楽曲を楽しめるように思えるが、「現時点ではMP3形式ファイルをコピーして楽しんでほしい」と、日本マイクロソフトのインタラクティブ エンターテインメントビジネス Xboxプロダクトマーケティンググループ シニアマネージャーである井上正之氏は述べていた。こちらも今後の改善課題だという(図05)。

日本マイクロソフト 執行役常務 コンシューマー&パートナーグループ担当の香山春明氏は、Xbox Musicを「Officeなどのビジネスアプリケーションだけでなく、エンターテインメントにもWindows 8.1デバイスを利用してほしい」と述べつつ、「Xbox MusicはWindows 8.1に最適化するため、Windows 8は未対応となる」と注意をうながした(図06~07)。

図06 最初にサービスの概要を説明した日本マイクロソフトの香山春明氏

図07 Windows 8.1のデスクトップとXbox Musicをスナップした状態。仕事をしながらでも音楽を楽しめることをアピールしていた

Xbox Musicがさまざまなデバイスで楽しめるサービスであることを強調するため、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部本部長の藤本恭史氏は、音楽を楽しむ際に最適なWindows 8.1デバイスを紹介。例えばNECパーソナルコンピューターのデバイスでは、YAMAHAサウンドシステムを搭載し、低音をよりクリアに再生する技術が組み込まれているという(図08~09)。

図08 Xbox Musicの説明を行った日本マイクロソフトの藤本恭史氏

図09 より音楽を楽しめるデバイスとして、いくつかのWindows 8.1搭載コンピュータが紹介された

Xbox Musicは今回の発表時点では開発段階だが、デモンストレーションでは邦楽タイトルも並び、音楽再生も行われた。楽曲購入時は、30秒間の試聴で気になる曲を探し出せるという。また、Bing検索との連動性を利用し、今後はヒーローアンサー(人物や都市と判断されるキーワードを検索する際に、特別なユーザーインタフェースで検索結果を提供する機能)から、直接楽曲購入も可能になるという(図10~11)。

図10 Xbox Musicのデモンストレーションでは、国内のアーティストも購入リストに並んでいた

図11 今後はWindows 8.1のヒーローアンサーから楽曲を直接購入可能にするという

海外のXbox Musicは前述のように、Xbox 360やWindows Phoneだけでなく、iOSやAndroid向けアプリケーションもリリースしている。この点に関して質問が上がると井上氏は、「Xbox Music Passを視聴するための端末としてアプリケーションを提供している。(日本では)今後サービスを拡張していく段階で、プラットフォームの検討を行う」と回答していた。

確かに、今回日本で展開するのは楽曲をオンライン購入するXbox Music Storeであり、Xbox Music Passのサービスが始まらないとアプリケーションも意味をなさない。そもそも楽曲の著作権など法整備の問題がクリアされないと、ストリーミングサービスの提供も難しく、他のライバル企業も国内向け音楽配信サービスは海外でのみ提供している。この点をクリアするのは並大抵のことではないだろう。

まずは「Xbox Music」が国内展開することを評価し、「Xbox Music Store」のラインナップに期待しつつ、サブスクリプションサービスへの拡充を期待したい。

阿久津良和(Cactus)