新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、独ノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)経済エネルギー省と共同で、医療機器ロボットを医療現場で幅広く活用するための実証試験として、サイバーダインが開発した装着型ロボット「HAL」を、独ボーフム市内の病院に導入し、現地のニーズに対応するための実証実験を開始したと発表した。

同事業は、今後の成長が期待される医療、介護、健康、福祉といった生活支援関連産業における日本のロボット技術の活用に向け、現場ニーズを反映しつつ相手国にて研究開発・実証を行うことで、技術水準の向上や海外展開や市場化の促進などを図ることを目的として行われるもの。

NRW州は欧州の中心に位置し、同国内で最も人口を擁する工業化の進んだ地域であり、海外からの企業進出も活発であり、ロボットシステムを受け入れやすい土壌があること、ならびに古くから炭坑業が盛んで炭鉱事故に対する労災の医療・介護保険制度も整備されていることなどといった背景がある。また、そうした現地のニーズへの対応として、HALは2013年8月に、医療機器として要求される国際的な安全性の基準を満たしたほか、EU域内の医療機器輸出に必要な欧州医療機器指令に適合していることを証明する「CEマーキング」も取得している。

実証実験は具体的には、CEマーキングの取得経験をもとに、HALの現地ニーズに対応するための研究開発と実証から、公的保険への収載、ドイツ国内での普及拡大を目指すことを目的に、試験環境、運用情報管理システムの構築を進め、脊髄損傷、脳卒中、その他の脳・神経・筋系等の疾患患者を対象に、実証のプロトコル作成・データ収集・分析を行っていく計画だという。

なおNEDOでは、今後、同プロジェクト期間中にドイツにおける公的保険収載を目指すと同時に、同国における普及に向けた取組みを行っていくとするほか、ドイツ以外の欧州地域におけるHALの普及拡大も目指したいとしている。

実証試験が行われるボーフム市内の病院に設置されたリハビリセンター

「HAL」を装着した様子