「The Verge」が報じた記事によると次期Surface Proとなる「Surface Pro 2(仮称)」が設計段階を終了し、2013年内にもリリースされると各海外メディアが報じている。Intel HaswellベースのCore i5を搭載し、物理メモリーを8ギガバイトに拡大。バッテリ駆動時間も約2時間追加して、約7時間まで拡大したという。

背面のキックスタンドは2段階の調整により、平面ではない場所での利用性を高めるそうだ。また、Surface RTも同様に次期モデルが計画されており、キックスタンドの改善が加わる。以前から噂(うわさ)されていたようにNVIDIA Tegra 4を搭載し、年内のリリースを目指しているという。Surface RT/Proユーザーとしては興味深い話だ。一部ユーザーから求められていたLTEなどのSIMスロットを備えるか詳細は不明である。

詳しくはMicrosoft/日本マイクロソフトの公式発表を待つことにし、先週もっとも大きな話題となった、Nokiaの携帯デバイス事業買収に注目したい。詳細は本誌でも既報のとおりだが、今回の買収はMicrosoftの弱点だったモバイル部門最大の強化策となるはずだ。今週はこの買収劇に焦点を当てたレポートをお送りする。

MicrosoftがNokiaを飲み込んだ日

8月末のSteve Balmer CEO(スティーブ・バルマー最高経営責任者)による一年以内の退任に続いて大きなニュースが舞い込んできた。Microsoftの公式ブログ「The Official Microsoft Blog」で、フィンランドのNokia(ノキア)を買収すると発表したのである。以前からNokiaは数少ないWindows Phoneをリリースしているハードウェアベンダーであり、Microsoftとは蜜月と言える日々を送ってきた。

昨年あたりからMicrosoftがNokiaを買収し、自社の携帯電話部門に加えるという噂はどこからともなく聞こえてきたが、その噂が現実になったのである。本レポートでも何度か触れてきたがMicrosoftはOSやソフトウェアを中心に大きくなった企業だ。当初はクライアントOS(オペレーティングシステム)のOEMリリースが中心だったが、自社販売に切り替えつつサーバーOS分野にもチャレンジし、その一方でOfficeスイートもリリース。そして現在はクラウドコンピューティングの分野にまで手を広げている。

このようにコンピューターに関する多角経営を行ってきた同社だが、"モバイル"に関しては苦手のようだ。もちろん同社も手をこまねいてきた訳ではない。組み込み型のリアルタイムOSを目指して開発を始めたWindows CE(Embedded CE)をベースに、「Pocket PC(ポケットピーシー)」というプラットフォームを展開していた。これが1998年の頃である。2003年からは「Windows Mobile」に改称し、PDA(Personal Digital Assistant)から携帯電話、そしてスマートフォンと時流に合わせて変化させてきた。現在の「Windows Phone」に変更したのは2010年以降である。

しかし、そのシェアはスマートフォン市場が示しているとおりだ。米IDCのプレスリリースによれば、2013年第2四半期のシェアはAndroidが79.3パーセント、iOSが13.2パーセントに対し、Windows Phoneは3.7パーセントにとどまっている。いずれにせよチャレンジするタイミングは決して遅くないものの、先行する他社に対して出遅れているのが現状だ。

ここでBalmer氏のCEO退任について再考したい。2013年のMicrosoftは「デバイス&サービスカンパニー」や「One Microsoft」といった方針を掲げている。前述のBalmer氏も自身が中心となって次世代のMicrosoftを作り上げていようと思っていたはずだ。確証がないため断言できないが、CEO交代はアクティビスト(物言う株主)や機関投資家からの影響が少なくなかったのだろう。

ユーザーレベルでは「Next Microsoft CEO」なる非公式サイトが立ち上がり、次期Microsoft CEOの人気投票が行われている。執筆時点では「Steam(スティーム)」を運営し、過去には「Half-Life」などのPCゲームをリリースしたValve Corporation(バルブ・コーポレーション)のGabe Newell(ゲイブ・ニューウェル)氏が1位。ちなみに同士は元Microsoft社員である。続く2位はGNUのRichard Stallman(リチャード・ストールマン)氏が、3位にLinuxの開発者であるLinus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏がランクイン。Microsoft創業者の一人であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏は4位だった(図01)。

図01 9月5日時点の「Next Microsoft CEO」によるランキング。個人的には11位にMicrosoftのテクニカルフェローであるMark Russinovich(マーク・ルシノビッチ)氏がランクインしているのが興味深い

Stallman氏やTorvalds氏がMicrosoft CEOの席に着くとは、常識的に見て考えられないが、本当のCEOレースに名乗りを上げる可能性が高いのは、今回の買収でMicrosoftに参加するNokiaのCEOである。ブログで発表された記事は「Balmer氏と(Nokia CEOである)Stephen Elop(スティーブン・エロップ)氏の公開書簡」というタイトルが付けられ、Nokiaが持つポテンシャルをMicrosoftのサービスと取り組むことで新たなサービスの構築が可能であることが語られている。記事の末尾は両者の署名で締めくくり、良好な関係であることをさらにアピールした(図02)。

図02 今回の買収劇を報告する「The Official Microsoft Blog」。Ballmer氏とStephen氏両者の署名がなされている

図03 Nokiaのスマートデバイス担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJo Harlow氏。Microsoftに移籍する予定だという

Nokia買収に関しては正式なプレスリリースもいくつか出されており、「Media alert: Microsoft to acquire Nokia’s Devices & Services business, license Nokia’s patents and mapping services」で買収タイミングやライセンス特許の資金を明らかにし、「Microsoft to acquire Nokia’s devices & services business, license Nokia’s patents and mapping servicesでNokiaから取得するサービス内容の詳細を説明。そして「Steve Ballmer email to Microsoft employees on Nokia Devices & Services acquisitionで買収に伴う具体的内容を語っている。たとえば、スマートデバイス担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJo Harlow(ジョー・ハーロウ)氏はMicrosoftに移籍し、スマートデバイスチームを担当するそうだ(図03)。

デバイスおよびサービス事業に7.9億ユーロ、特許ライセンス料に16.5億ユーロ、総額54.4億ユーロ(約7,160億円:約131.6円で換算)を支払い、買収はNokiaの株主承認が必要となるため、買収は2014年第1四半期に完了する予定である。Microsoftはこの買収で過去に注力しながらも一定のシェアにとどまっていたモバイル事業を強化するのが主目的であるのは明らかであり、Ballmer氏も「Microsoftのモバイルシェアを加速させるだろう」と前述のブログで述べている。