いちばんの見どころは、ライブビューや動画用のAFに「デュアルピクセルCMOS AF」と呼ばれる新システムを採用したことだ。これは1つの画素を2つのフォトダイオードに分割して利用する仕組み。AFの際は、それぞれのフォトダイオードから得られる信号を検出して位相差AFセンサーとして活用し、撮像の際は、2つのフォトダイオードを合わせて1つの画素として画像信号を出力するという。

これまでの「EOS」シリーズでは、ライブビュー時のAFの遅さが弱点だった。たとえばEOS 60Dの場合、コントラスト検出AFのためAFの動作は緩慢で、動きのある被写体にピントを合わせることは難しかった。位相差AFが作動するクイックモードも備えるが、その場合は撮影時にミラーが上下し、ライブビューが途切れるため使い勝手はあまりよくない。

その後に登場した下位モデル「EOS Kiss X6i」や「EOS Kiss X7i」では、撮像素子に位相差AF用の画素を埋め込むことで、ライブビュー時に位相差AFを可能にする「ハイブリッドCMOS AF」を採用。さらに、今春の「EOS Kiss X7」では、位相差画素の範囲を広げた「ハイブリッドCMOS AF II」を搭載。これによってライブビュー時のAFスピードは実用レベルにまで向上し、ストレスは軽減した。

ライブビューの設定メニュー。ライブビュー時のコンティニュアスAFに対応

STM対応の標準ズーム「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM」を装着した状態

ただ、それでもミラーレスカメラのAFに比べると十分とはいえなかった。また、AF駆動にステッピングモーターとリードスクリューを採用した「STMレンズ」では実用的な速度が得られるが、それ以外のレンズでは合焦までに待たされ、動きのある被写体を撮るのはやはり困難だった。

その問題をかなりのレベルまで改善したのが、今回のデュアルピクセルCMOS AFだ。EOS Kiss X7に比べた場合、ライブビュー時のAFは約30%のスピードアップを実現。試用では、ゆっくりした動きなら、動体撮影も可能なAF性能を確認できた。しかも、現時点で103本の交換レンズがデュアルピクセルCMOS AFに対応する。STM仕様ではないレンズでも、スムーズなAF速度が得られるようになったのだ。

惜しいのは、シャッターを切ってから撮影画像が表示されるまでの間に液晶画面が一瞬ブラックアウトすること。また、ライブビューの状態で連写を行うと、連写の間はずっと液晶が表示されない点も物足りない。これらの点が改善されなかったのは残念だが、AFのスピードアップについては、使い勝手を高める大きな進化といっていい。

天面のボタン配置はEOS 60Dを継承。変わったのは、シャッターボタンのそばに「測距エリア選択モード切り換えボタン」を新設したことと、モードダイヤル内のシーンモードを「SCN」に集約したこと

背面ボタンについては、その配置が大きく変わった。たとえば、下段にあった再生ボタンは中段に、右側にあったMENUボタンは左側に、左側にあったゴミ箱ボタンは右下にそれぞれ移動している

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