既報の通り、韓国サムスン・エレクトロニクスは7月18日、韓国・ソウルでSSD関連の発表会「2013 Samsung SSD Global Summit」を開催。コンシューマー向け2.5インチSSDの新製品「Samsung SSD 840 EVO」を発表し、その高速化技術について解説を行った。

Samsung SSD 840 EVOは、2012年9月に登場した「Samsung SSD 840」の後継モデル。TLC NANDフラッシュを採用したメインストリーム向け製品でありながら、ハイエンド製品のSamsung SSD 840 PROに匹敵する性能を実現している。ここでは、Samsung SSD 840 EVOに新たに搭載された高速化技術を紹介したい。

Samsung SSD 840 EVO

多くの国でSamsung SSDがマーケットシェアトップを達成

同サミットでは、ブランドプロダクトマーケティングチームマネージャのジョナサン・ダ・シルバ氏が、Samsung SSD 840 EVOの新技術について解説。同氏はまず、Samsung SSDの各国でのマーケットシェアの変遷について述べた。

サムスンが同社ブランドでのコンシューマー向けSSD販売を開始したのは2010年だが、シェアを急速に伸ばし、わずか3年で、多くの国でマーケットシェアナンバーワンを達成している。また、CPUの性能向上ペースに比べて、HDDの性能向上ペースははるかに遅く、年々性能差が開いているため、ストレージがパフォーマンスのボトルネックになっていることを指摘した。

Samsung SSD 840 EVOの新技術について解説を行ったブランドプロダクトマーケティングチームマネージャのジョナサン・ダ・シルバ氏

Samsung SSDの各国でのマーケットシェアの変遷。Samsung SSD 830をリリースした2011年10月(日本では2012年4月発表)から急上昇しており、イタリアでは57%ものシェアを獲得

1980年から2010年までの30年間で、CPU性能は2万倍に向上したが、HDDの性能は12倍しか向上していない

以前は、PCのアップグレードといえば、CPUやHDDのアップグレードが主だった。しかし、2012年夏からは、SSDのアップグレードがGoogle Trendsでも最上位に来るようになった

コントローラが高速化し、キャッシュ容量が倍増

Samsung SSD 840 EVOの製品ラインナップ。新たに750GBと1TBが追加され、全部で5モデルとなった(120GB / 250GB / 500GB / 750GB / 1TB)

新モデルのSamsung SSD 840 EVOと、従来モデルであるSamsung SSD 840のハードウェア的な違いは、NANDフラッシュのプロセスルールのシュリンク、コントローラがMDXからMEXに変更されたこと、キャッシュサイズ倍増の3点である。ラインナップを見ると、Samsung SSD 840 EVOでは、新たに750GB / 1TBモデルが追加され、全部で5モデルとなった(120GB / 250GB / 500GB / 750GB / 1TB)。

Samsung SSD 840のNANDフラッシュは2x nmプロセスルールで製造されていたが、Samsung SSD 840 EVOのNANDフラッシュは19nmプロセスルールだ(プレゼンテーションでは1x nmとなっていたが、質疑応答で19nmであることが明らかに)。

従来のSamsung SSD 840と新製品のSamsung SSD 840 EVOの比較。NANDフラッシュのプロセスルールが2x nmから1x nmにシュリンクされているほか、コントローラがMDXからMEXに進化。MEXは、MDXと同じトリプルコアだが、コアクロックが300MHzから400MHzへと33%向上。キャッシュ用DRAM容量は最大512MBから最大1GBに倍増し、信号処理アルゴリズムも改善された

また、Samsung SSDは、NANDフラッシュを知り尽くしたSamsung製コントローラを採用していることがウリの一つ。Samsung製コントローラは「MAX」→「MBX」→「MCX」→「MDX」と進化してきており、今回のSamsung SSD 840 EVOに搭載されたMEXは、第5世代となる。MEXは、第4世代のMDXと同じくトリプルコアだが、コアクロックが300MHzから400MHzへと33%向上し、処理性能がアップしている。キャッシュとして用いるDRAM容量は、最大512MBから最大1GBに倍増した(キャッシュ容量はSSD容量によって異なり、120GBモデルが256MB、250GB / 500GBモデルが512MB、1TBモデルが1GB)。

ファームウェアに関しても、大きく改良が行われている。後述する「TurboWrite」も、ファームウェアによって実現されている機能だが、それ以外にも、信号処理アルゴリズムが改善されており、従来と同等の信頼性を実現したという。

Samsung SSD 840 EVOは、2012年に登場したSamsung SSD 840に続く、第2世代のTLC SSDであり、そのコンセプトは「より高速に」「より高い信頼性」「より簡単に」というものだ。プレゼンでは実際のベンチマーク結果が示されたが、Samsung SSD 840 EVOは、Samsung SSD 840に比べて、ランダムリード/ライト性能やシーケンシャルライト性能が大きく向上している。このうち、ランダムリード/ライト性能の向上は、コントローラのクロックが上がり、処理性能が向上したことが大きな理由だ。

Samsung SSD 840 EVOは第2世代のTLC SSDであり、「より高速に」「より高い信頼性」「より簡単に」をコンセプトとする

Samsung SSD 840とSamsung SSD 840 EVOのパフォーマンス比較。ランダムリードが7,900IOPSから10,000IOPSに、ランダムライトが29,000IOPSから33,000IOPSに向上

コントローラのクロックが向上したことで、QD1でのランダムリードは、7,900IOPSから10,000IOPSへと27%向上した

シーケンシャルライト速度も大幅に向上。容量によって速度は異なるが、120GBモデルでは130MB/sから410MB/sに、250GBモデルでは250MB/sから520MB/sに、500GB以上のモデルでは330MB/sから520MB/sに向上

シーケンシャルライト速度は、容量が小さいものほど向上幅が大きい

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