とはいえ、家庭の節電もよほど意識的にやらないと難しいように、プロセッサの電源を部分的に落とすのも一筋縄ではいかない。例えば、一度エアコンをオフにしてしまうと、再びエアコンをオンにして快適な温度になるまでには時間がかかる。そればかりか、つけっぱなしのほうがトータルの消費電力は少なくて済むことすらある。PCのプロセッサも同じで、動かしたり止めたりと状態を切り替えるごとに、本来不要な電力を消費してしまう。

また、アイドリングになりたくてもなれないという場面も少なくない。プロセッサの仕事は、Windows自体を動作させるだけでなく、キーボードやマウスから流れ込んでくる操作を受け付けたり、ハードディスクやUSBの読み書きをしたり、ネットワークでデータを送受信したりと、極めて多岐渡っている。しかも、これらの仕事がバラバラのタイミングでやってくるので、ひとつの作業が終わってアイドリング状態に入ろうとしても、すぐ次の作業が入ってきてしまい電力を落とすチャンスがなかなかやってこないということになる。

例えて言えばこうだ。1日の家事を終えて就寝するとしばらくして子供が泣き出してしまい、ようやくあやして寝かしつけて布団にもぐり込んだら夜中なのに電話が鳴ってまた起こされ、切って再びまどろんだところで耳元に蚊が飛んで来てうるさいしかゆいし……と、このような夜が続いたら体も休まらない。せめて寝る前にまとめて片付いていれば、少なくとも数時間の安眠が確保できるのに……。

PCで実際にどれだけ消費電力を削減できるかは、単にアイドリングストップの仕組みを用意するだけでなく、ストップした状態をいかに長く維持できるかにかかっている。このため、第4世代Coreプロセッサでは、先に説明したようなPCのさまざまな仕事のうち、急を要しないものはわざと処理するタイミングを遅らせるなどして、PC全体のあちこちで発生する仕事をなるべく同じタイミングでいっぺんに片付ける仕組みが採り入れられている。

第4世代Coreでは、割り込みのタイミングをひとまとめに。Windows 8ではOSからの割り込み時間も調整できるため、より省電力化できる

これにより、プロセッサができるだけ長い時間アイドリング状態にとどまれるようにするとともに、寝たり起きたりと状態が変化する回数を極力減らすことで、より高い省電力効果を得られるようにしている。なお、「わざと処理するタイミングを遅らせる」といっても、0コンマ何秒の世界の話なので、ユーザーがその遅れを実感する機会はまずない。

また、Windows 8では、ハードディスクやキーボードなどの処理のタイミングにあわせてWindowsの処理のタイミングを変更する機能が搭載されている。このため、第4世代Coreプロセッサを搭載したPCでは、Windows 7以前よりもWindows 8で動作させたときのほうが長いバッテリ駆動時間が期待できる。

このれらの省電力技術は「Power Optimizer(パワー・オプティマイザ)」と呼ばれる。CPUが活動しているときに発生する仕事を一度にまとめ、できるだけ長くスリープ状態に置く(Cステートを保つ)技術だ。

この技術によって、より長い間、復帰できる状態でのアイドリング時間が長くなった

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