会場で見かけた「Kinect for Windows」の実用例
昨日、日本マイクロソフトで新年度の経営方針発表会が開催された。詳しい内容は本誌の記事をご覧頂くと分かるように、同社の代表執行役社長である樋口泰行氏は「『タブレットは意外に使えることが少ない』ことに気付いているお客様が多い」と述べ、Surfaceシリーズのアドバンテージをアピールした(図03)。
同発表会では、30名ほどの専任部隊で構成されたSurfaceシリーズの法人向け展開や、「デバイス&サービスカンパニー」へ革新するため、クラウドサービスをまい進させるためのクラウド事業推進室設立なども発表されたが、本稿をご覧の読者はあまり興味を持てない話かもしれない。そこで発表会終了後に行われた記者懇談会場横に設置されていたデバイスに注目してみた。
会場横には、以前の発表会でも見かけた人流計測システムが設置されていた。そもそも人流計測は度数計と呼ばれるカウンターで目の前を通る人数を計測するのが一般的である。この測定作業をKinect for Windowsのカメラを使って行うのが、株式会社リゾームによる人流計測システム「Hello Counter」だ(図04~05)。
画面左側には計測グラフが表示され、ちょうどHello Counterを設置したと思われる午前10時からグラフが伸び上がり、会場の設置で料理などを運んだであろう午前11時がピーク。我々が会場入りした正午はそれほどの伸びなかったのは、Kinect for Windowsの目の前を通る記者が少なかったからだろう。
Hello Counterは、収集したデータをWindows ServerおよびSQL Serverによるデータ分析を行い、商業施設などの人流調査や入店客数と売り上げ客数割合の分析など、さまざまな用途に利用できると言う。海外では洋服の試着を仮想的に行うFakecakeなど導入事例が増えつつあるが、いまだB2B(Business to Business)にとどまっているのが現状だ。今後のB2C(Business to Consumer)もしくはC2Cでの活用シーンに期待したい(図06)。
同じ場所に設置されていたのが、Kinect for Windowsとプロジェクターを組み合わせたプロジェクトマッピングシステム。一見するとIllumiRoom(イルミルーム:詳しくは以前の記事をご覧頂きたい)に似たシステムだが、そちらは部屋の奥行きや形状をスキャンするデバイスを併用するため、似て非なるものである(図07)。
会場に設置されたディスプレイと自社ロゴにプロジェクターを向け、ディスプレイの周りにアニメーション効果を映し出し、自社ロゴを浮き出す効果がデモンストレーションされていた。撮影した写真はご覧に入れる様なものではないため、同社広報のツイートをリンクするので、そちらをご覧頂きたい。
さすがにIllumiRoomと比べると見劣りはするものの、会場にいた同社担当者に話を伺ったところ、IllumiRoomはいまだ実験段階であり、次世代コンシューマーデバイスであるXbox Oneのオプションとしてラインナップに並ぶ予定はないと言う。日本を除いた海外主要国では2013年11月に発売が予定されているだけに、2015年頃にはIllumiRoomによる迫力あるゲームを楽しめると期待していたが、コスト面などクリアしなければならない問題が多いそうだ。
いまだIllumiRoomは、Microsoftの研究機関であるMicrosoft Researchの管轄にあるだけに、商品化を期待するのは早計かもしれないが、個人的にはディスプレイと言う"枠"に囲まれたイメージを広く拡散させるシステムの早期登場を期待したい。
阿久津良和(Cactus)