時計の文字盤を再定義

続いて紹介する「LINED CLOCK」(佐藤 賢幸 Masayuki Sato Design Bureau)は、機能を保ちつつ、最大限にシンプルを極めたデザインの時計だ。

文字盤のふちに数字や線が刻まれている従来の物とは異なる解を示した「LINED CLOCK」(佐藤賢幸 Masayuki Sato Design Bureau)

縦横に「線」が刻まれており、その「線」をきっかけに時間を読み取ることができる。「線」に分針の先端が重なる時に5分、10分、15分を示す。時針の先端が重なる時に1時、2時、3時……と指し示している。文字で説明するのはいささか難しいのだが、写真を見れば感覚的にお分かりいただけるだろう。

針のない盤面をもつ時計

光のラインが時を示す「Simple Time」(細田 彰一 Nippon Institute of Technology)

また、時を刻むその針さえも取り除いてしまったのがSimple Time(細田 彰一 Nippon Institute of Technology)。こちらはLEDの光の動きによって「おおよその」時間を表示するアート時計で、放射状に配置されたバーが「時」を、内側のリングが「分」を光で表している。正解な時間を知りたいならば携帯電話や腕時計で十分であり、置き時計はアートとして存在しているだけで、その場を演出するデザインアイテムになりつつあるのかもしれない。

スマホの携帯スタイルを提案

最後に、スマートフォンを持ち歩くためのアイテム「Slipin」(マツバラ アツシ WARPDESIGN)を紹介する。このアイテムを作ったマツバラ氏は、「近年のスマートフォンは、機能の充実に伴ってサイズが大きくなっているじゃないですか。モバイルを首にぶら下げるのはもう古いというか、ムリだろうということで」と、笑顔でコンセプトを語ってくれた。

スマートフォン収納ケースのSlipin(マツバラ アツシ WARPDESIGN)。ホルダー・ストラップ共にデザインバリエーションが豊富

スマートフォンを持ち歩く新しいファッションとして、抜群のフィット感で「着こなす」ことのできる携帯ケース。フタがなく出し入れが簡単なのに落ちにくい構造(特許出願・意匠登録済とのこと)で、さまざまなメーカーのスマートフォンを収納することが可能だ。ホルダーとストラップの色と素材は自由に組み合わせられるので、どんな服にも合わせられるのが嬉しい。

「いいデザイン」と「売れるデザイン」の橋渡し

いかがだっただろうか。ブースでクリエイターの話を聞いていて、どの人にも共通していると感じたのは、「苦労して作りだした作品に対し、我が子のように愛情を感じている」こと。作品の説明をうかがっているだけで、そこに愛がたっぷりと込められているのが伝わってきた。

「いいデザイン」と「売れるデザイン」の間には、いつだって見えない大きな川があると筆者は考える。今回の特別企画がそこに橋をかけるものとして、日本のクリエイターやデザイン業界を輝かせるものであったら、と思う。企画コンセプトからも分かる通り、まだ通常ルートで販売されていないものが多いので、うっかり一目ぼれして「どうしてもいますぐ欲しい!」という人は、クリエイターとじかにコンタクトをとってみるのもいいだろう。