WebGLをサポートするInternet Explorer 11

Windows 8.1とは直接関係ないが、壇上には情報プラットフォーム&エクスペリエンス担当のコーポレートバイスプレジデントであるGurdeep Singh Pall(ガーディープ・シン・ポール)氏も登場。Bingの検索APIに加えて、アプリケーションフレームワークの提供も開発者に公開することを発表した。本稿はコンシューマーユーザーを対象にしているため、開発者向けの情報は興味ないと思われるが、そもそもMicrosoftの検索サービスであるBingは、Windows 8.1と密接な関係にある。同OSの検索チャームから実行する検索はBingも対象に含まれるため、Windows 8.1の利便性はBing検索エンジンの性能と比例すると述べても過言ではないからだ(図12~13)。

図12 情報プラットフォーム&エクスペリエンス担当バイスプレジデントのGurdeep Singh Pall氏

図13 Bingが対象とするプラットフォーム。「Real World(現実世界)」が含まれているのは興味深い

同氏はBing Mapsによる3D表示状態からの地図検索や、建築物に対するWeb検索などをデモンストレーションし、Windows 8.1とBingの親和性向上をアピール。さらに、タブレットが備えるWebカメラから印刷物などを映し出し、OCR機能で映し出された文字を検索・翻訳するデモンストレーションも公開。これは同社研究機関だるMicrosoft Researchと共同開発した「Bing Translator」にも似たような機能が搭載されているが(同アプリの記事はこちら)、今後はWindowsストアアプリの「Bing」が備える標準機能の一つとして搭載を目指すのだろう。より、詳しい情報は同氏名で寄稿された「Bing Blogs」の記事をご覧いただきたい(図14~16)。

図14 3D表示による地図探索を可能にしたBing Mapsのデモンストレーション

図15 タブレット型コンピューターのカメラで映し出したペーパーをOCR認識する。これが"Real World"なのだろう

図16 分析したOCR結果は画面のように映し出される。また、「Bing Translator」のように音声認識も備えていた

Leblond氏は主にVisual Studio 2013に関する紹介を行っていたが、コンシューマーユーザーとして注目したいのは、Windows 8.1の標準搭載されるInternet Explorer 11の存在である。同氏は「タッチ操作に向けて最適化した」と述べ、スワイプによる直前・直後のWebページに移動する機能などを搭載したことを紹介。この他にもウィンドウあたり最大100個のタブやHTML5の動作再生、ページレンダリングスピードの向上など数多くの機能を搭載しているが、興味深いのはWebGLのサポートである(図17)。

図17 WebGLのデモンストレーション。動画では滑らかに再生されていた

そもそもWebGLとは、Webブラウザー上で3Dグラフィックスを表示するための標準仕様で、ライバルWebブラウザーのMozilla FirefoxやGoogle Chromeは早い時期からサポートしてきた。しかし、2011年5月に発見されたセキュリティホールにより普及は足止めを食らってしまったが、その後のOpenGL 3.xが普及することで、再び注目を集めている。これらの状態を鑑みてMicrosoftもWebGLのサポートを決めたのだろう。図17のWindowsフラッグが回転するデモンストレーションは、こちらのページで実際に試すことが可能だ。Windows 8.1プレビューをインストールした方はリンクで試してみるといいだろう(図18)。

図18 四つのWebGLコンテンツを同時再生するデモンストレーション。こちらもスムーズに再生されていた

この他にもスタート画面にピン留めしたタイルがライブタイル化し、Web閲覧状態をデバイス間で同期することが可能だ。公式ブログの一つ「IEBlog」には、Internet Explorer担当コーポレートバイスプレジデントであるDean Hachamovitch(ディーン・ハカモビッチ)氏の名前で記事が掲載され、多くの新機能について紹介されている。Internet Explorer 11の新機能に興味をお持ちの方は合わせてご覧いただきたい。

初日のキーノートで発表された情報としては、Windowsストアの刷新なども興味深いが、開発者向けコンテンツである「Windows 8.1 Product Guide for Developers」の「Desktop app advancements」に含まれる「High DPI support」だ。そのまま意訳すると、「200DPI以上などHigh DPIディスプレイのサポートを改善し、デスクトップアプリはイベントを受け取ることでHigh DPI画面を活用できる」という説明がなされている(図19)。

図19 Windows 8.1プレビューの「ディスプレイ」。カスタムサイズ変更オプションダイアログでは、500パーセントまで拡大可能だった(Windows 7は200パーセント)

確かにWindows 8.1プレビューで「ディスプレイ」を開くと、従来のラジオボタンがスライダーに置き換わっているが、選択できるのは従来のラジオボタンと同じく三段階。そもそもWindows 7でもHigh DPIはサポートされていたが、Windows 8.1では異なるDPIを持つディスプレイをマルチモニター構成で利用している場合でも、正常に動作するという。既にハイエンド環境はHigh DPIディスプレイのニーズが高まり、Microsoftでは4Kディスプレイの実験も行われている。こちらに関しては技術資料がWordドキュメント形式公開されているので、そちらをご覧いただきたい(図20)。

図20 High DPIに関する技術資料「Writing DPI-Aware Desktop Applications in Windows 8.1 Preview」

二日目のキーノートは、同社のサーバー&ツールビジネス担当プレジデントであるSatya Nadella(サトヤ・ナデラ)氏が壇上に立ち、Windows Azureなどのサーバー系情報が中心となった。三日目のセッションも「C++の未来」や「モバイルサービスに接続するWindows 8.1アプリケーションの構築」など、日本のエンドユーザーには直接関係ないものばかりなので、本稿では割愛することにした。今年のBuild 2013はこれで終了し、Windows 8.1という興味深い存在を残しつつ幕を閉じたのである。Windows 8.1に関してはプレビュー版をベースに続報をお送りする。

阿久津良和(Cactus