ソニーは2013年6月20日、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪で午前10時より、第96回定時株主総会を開催した。会場には1万693人の株主が出席し、過去最高の出席数となった。
議長を務めたソニー代表執行役兼取締役・平井一夫社長の開会宣言に続き、加藤優CFOが、2012年度の事業報告および2013年度の業績見通しについて説明。2012年度は、2012年4月に発足した新経営体制のもと、危機感とスピード感を持って成長領域への投資や事業ポートフォリオの再編、財務基盤の強化、構造改革への取り組みを進めてきたことを強調。ソニーモバイルが2012年2月に100%子会社となったこと、事業ポートフォリオの再編や資産売却によって、2,000億円を超える営業利益を計上したことなどを示した。加藤CFOは「5年ぶりの最終損益の黒字化を達成したものの、エレクトロニクス事業が黒字化せず、課題を残す結果となった」と総括した。
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2013年度の重要課題はエレクトロニクス事業の黒字化
2013年度は、映画、音楽および金融分野での安定的な収益獲得、エレクトロニクス事業の黒字化、財務基盤のさらなる強化を重要な目標とし、「エレクトロニクス事業の黒字化達成のためには、スマートフォンなどのモバイル事業の大幅な損益改善、テレビ事業の黒字化が重要な課題であり、成長するスマートフォン市場での売上伸張、テレビ事業ではコスト削減の継続化とフルHDモデルの画質・音質の向上、4K対応液晶テレビのラインアップの追加などにより商品力を強化する。年内にはプレイステーション4を投入する予定であり、売り上げ増への貢献を見込む。円安は、ソニーにとってプラスの影響となる。2103年度も改革のスピードを緩めることなく取り組んでいく」(加藤CFO)などと2013年度の見通しを語った。
続いて平井社長は、今後の経営施策について説明。「2012年度は、ソニーの歴史のなかで、最も多くの大胆な構造改革を実施した年だった。どうすれば利益を出すことができればとの考えで、私自身が昨年1年間を掛けて16カ国45カ所を回り、社員と議論をしてきた」と前置きし、「そこで、取り組むべき課題と、ソニーが持つ潜在的な力を確認できた」と強調。「ソニーがソニーらしく存在するにはどうあるべきか。それは、経験したことがない驚きや感動を提供し、好奇心を刺激する会社でなくてはならないということ。心を動かす感性価値を生み出すのが、ソニーの製品である。機能価値は提供できているが、感性価値がまだ十分ではない。だが、感性価値を持った製品が少しずつ出ている。デジタルカメラのDSC-RX1やスマートフォンのXperiaがそれに当たる。より踏み込んだ構造改革に取り組み、攻めの体質に転換することが最大の課題である」などと語った。
2013年度の取り組みとして平井社長は、「エレクトロニクス事業の強化」、「エンタテインメントおよび金融事業の収益強化」、「グループ全体の財務基盤のさらなる強化」の3点を挙げる。エレクトロニクス事業の強化に関しては、「競争力のある製品の投入、構造改革への取り組み、競争に勝つことが不可欠。AVC市場を上回る成長を遂げるスマートフォン市場にいかに対応するかが鍵であり、この市場では従来の製品戦略では通用しない環境になっていることも認識している。ソニーの総合力を生かした最強の製品を投入する。モバイル、イメージング、ゲームのコア3事業の変革を加速し、テレビ事業の黒字化は2013年度の必達目標とする。テレビは、今期から攻めの体制にシフトする。一方で、プレイステーションは、攻めの姿勢でビジネスの拡大をする。年末に投入するプレイステーション4は、専用機ならではの最高のゲーム体験を提供するが、スマートフォンやタブレットに対しても、オープンに対応する機能を提供し、PS4の魅力を知ってもらえるようになる」と説明した。
また、エンタテインメントおよび金融事業の収益強化では、「高い収益性が見込める映画制作のほか、テレビ番組事業やネットワーク事業により収益拡大を見込むこと、金融分野では高品質なサービスによって、顧客満足度を高め、安定的な利益成長を見込む」と語った。
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「ソニーがなかったら世界はつまらない」と言ってもらいたい
説明の最後に平井社長は、「ソニーは、エレクトロニクス、エンタテインメント、金融分野でも、新たなスタイルを築いてきた会社。それがソニーのDNAである。私事だが、私の祖父や父がソニーファンであり、子供の頃からソニー製品に囲まれていた。オープンリールレコーダーや、5型マイクロテレビのほか、お小遣いやお年玉を貯めて、短波ラジオのスカイセンサーを購入して夢中になった。世界中の短波放送を自分の部屋で聴き、世界とリアルタイムにつながっていることに喜び、好奇心に満ちあふれた。CEOになった今でも私は、自分で使ってもないと気が済まない。CEOと顧客の立場から、『SONY』のブランドを付けるのに相応しい製品になっているか。私がソニーの製品を使って、感じたことを直接フィードバックしている。『ソニーがなかったら、そんな世界はつまらない』と言ってもらえるようになりたい。ソニーは、魅力的な製品やサービスを生み出すので、ぜひ期待してほしい。グループ各社が持つ経営基盤の持ち味、ソニーの再生にかける社員の情熱、製品やサービスを生み出す力を生かすことが私の役割である」とソニー再生に懸ける意気込みをみせた。
一方で、米ヘッジファンドのサード・ポイントによるエンタテインメント分野の一部事業の上場提案などに関しても説明。「サード・ポイントからは、企業価値向上の提案をもらっている。ソニーは、エレクトロニクス事業の成長とともに、エンタテインメント、金融事業をさらに成長させることで企業価値を高めていくことを考えている。エンタテインメント事業は、ソニーの成長戦略の上で重要な事業であり、将来のソニーの事業のあり方に関わる重要な提案であると認識している。今後、取締役会で適切な検討を行い判断していく」と述べたほか、株主からの質問にも、「様々な角度から分析する考えであり、短時間で結論を出すものではない。真剣に議論し、その結果をサード・ポイントや、ほかの株主に説明をしていくというステップを踏むことが重要だ。新たな取締役会のなかで議論をしていく」などとした。