ワコムの21.5型モニター搭載の液晶ペンタブレット「Cintiq 22HD」にマルチタッチ機能を搭載した「Cintiq(シンティック) 22HD touch」が発売された。通常のペンタッチでの入力に加え、画面の回転や拡大・縮小を指でタッチして行うことができるというのが大きな特徴だ。

この記事では、ワコムの液晶ペンタブレットのラインナップの中ではいわば「Mサイズ」であるこの製品の実力や使用感を、「普段「Intuos5」を愛用している、フォトグラファー兼レタッチャー」としての立場から数回にわたりレポートしていきたいと思う。

■これまでの記事
【レビュー】CintiqとIntuosの書き心地の違いは? - レタッチャーの視点で見る「Cintiq 22HD touch」(1)

第2回である今回は、いよいよ本格的に「Cintiq 22HD touch」の実力を、性能面から掘り下げる。商業写真業界でモニターを使用する際には必須となる「モニターキャリブレーション」を行って、その過程をレポートしたい。

プロの現場で使用するにはキャリブレーションと呼ばれるモニターの色調整が必須だ

モニターキャリブレーションとは

まずは、「モニターキャリブレーション」とは何か、という点について触れておきたい。現在、PCのモニターをリリースしている各メーカーは、独自の考え方で"優れた"モニターを作ろうとしている。なるべく多くの色をキレイに表示することを目指した物もあれば、携帯性や価格競争力を追求した物もあり、その性格は様々だ。

多くの選択肢がある ことは歓迎すべきなのだが、こと「仕事として納品する写真を表示する」となると厄介な問題が出てくる。写真を撮影するフォトグラファー、それを受け取って制作を行うデザイナーや編集者、印刷業者、そして発注元であるクライアントや広告代理店など、プロジェクトに関わるメンバーの所有するモニターの性格がまちまちだと、様々な面で不都合が起きてくるのである。

そこで、「モニターキャリブレーション」という技術を使って、「モニターの色に「業界標準」を作って、なるべく表示を揃える」という考え方が普及した。注意したいのは、モニターキャリブレーションは、決してモニターの表示をキレイにするのが目的ではないということだ。モニターの表示を「標準化する」というイメージに近いといえる。

キャリブレーション途中の様子。モニターに表示させた色をセンサーで測って、表示誤差を修正する

しかしながら、「モニターキャリブレーション」という行為自体が、クリエイターなどごく限られた人にしか知られていない。それはつまり、一般の人々にとっては必須とはいえないことを示しており、結果としてこの技術自体が成熟しているとは言い難い部分はある。例えば、iOS機器のモニターは「Spyder」というセンサーでしかキャリブレーションが取れないし、Android機器に至っては、現在筆者の知る限りキャリブレーションを行う機器に選択肢自体がない。そんな状況の中、果たして「Cintiq 22HD touch」はきちんとキャリブレーションがとれるのか?というのが、フォトレタッチの観点からは重要な関心事項だということがおわかりいただければ幸いである。