スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですからスペック表を見ると、専門用語のオンパレード……おいそれと比較はできません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「人口カバー率と実人口カバー率」についてです。
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携帯電話/スマートフォンでいうところの「人口カバー率」とは、通信圏内にあると判定した市町村の人口を日本の総人口で除した数値で、通信サービス提供エリアの広がり具合を示す指標として利用されます。この数値が100%に近いほど、その携帯電話会社は"エリアが広い"とされます。総務省が定義したこの算出方式は、NTTドコモが通信エリアの充実度を説明するとき継続して採用されています。
その判定基準は市町村庁舎および支所に電波が届くかどうかで、届いたことが確認されればその市町村全域が「圏内」で総人口をカバーしたとみなし、逆に1つの支所にでも電波が届かないとその市町村全域が「圏外」とみなされます。
しかし、この考え方には悩ましい点があります。たとえば、広大な面積を持つ村があるとして、その村役場付近に基地局を用意すれば、その村全域が「圏内」として人口カバー率に算入されます。村内に電波が届かない住戸がどれだけあっても、村役場で通信できさえすればその村全体は「圏内」にカウントされてしまうのです。村の面積が広いほど、この矛盾は拡大します。
一方、KDDIとソフトバンクの2社は「実人口カバー率」を利用して通信エリアの充実度を説明します。この方式では、全国を500メートル四方の格子状に区分し、その一部にでも電波が届いたことが確認できれば区分全体を「圏内」、届かなければ「圏外」とみなし、そこの住む人の割合で圏内人口の比率を算出します。
対象エリアが細かく区切られている実人口カバー率のほうが、通信サービスの圏内/圏外を正確に判定できますが、500メートル四方のうちどれだけの面積に電波が届けば「圏内」と判定するかの基準は公表されていません。
このように、NTTドコモの「人口カバー率」とKDDI/ソフトバンクの「実人口カバー率」は算出基準が大きく異なるため、比べることはできません。KDDIとソフトバンクの2社間も、圏内/圏外の判定基準が定かでない以上、単純な比較は困難です。地下街やビル街など特殊な通信事情を抱えたエリアも少なくないことを考えると、基地局など通信施設の数と増設ペース、あるいは端末によって異なる対応周波数など他の要素も加味しなければ、携帯電話会社の"実力"はうかがえないというのが実情です。