BS-TBSと慶応義塾大学は21日、人物の表情・動きに合わせて3Dキャラクターを動かす「リアルタイムアバターシステム」に関して、共同研究と運用試験を開始すると発表。同社の出水麻衣アナウンサーをイメージしたキャラクターと本人によるデモンストレーションを行った。
「リアルタイムアバターシステム」は、カメラで撮影している人物の表情や動きにあわせ、リアルタイムで3Dキャラクターを動かすためのシステム。慶応義塾大学で開発されているもので、人間のしぐさや表情を、自然な形で再現できるのが特徴だという。
慶応義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科の満倉靖恵准教授によれば、同システムの最大のこだわりは「Webカメラ1台でキャラクターを動かす」という部分。これまで世に出ている類似のシステムとの違いとして、反応の素早さと表情の認識が可能になった点を挙げた。
現在は顔まわりの動きのみを認識しているが、今後は全身の動きを読み取ることができるように開発を進めていく予定。全身の動きを読み取る場合、現行の手段ではカメラと人物の間は3メートル程度離す必要があるが、そうすると表情の読み取りが不可能になってしまうと満倉准教授は語る。このシステムでは、全身の動きから表情まで、すべて1台のカメラで読み取ることができるようにするのが目標と意気込んでいた。
また、同社 制作局の丹羽多聞アンドリウ事業部長は、2013年夏に開催されるイベント内にて、同システムを用いた声優の朗読劇の実施を計画中とコメント。その一方で、番組と連動した形でこのシステムを用いることも検討していると発言すると、同席した出水アナウンサーは「もしバーチャルアナウンサーが出てくるとなると、我々(アナウンサー)は戦々恐々としてしまいますね」とコメントした。これ以外にも、ユーザーが同システムを体験できるよう、スマートフォンを利用した施策や、SNSでの展開も考案中だという。
ちなみに、今回の協業はBS-TBSによる同システムの独占契約ということではなく、他社でのシステム利用を制限するような内容は含まれていない。満倉准教授はSNSとの連動やライフログ取得の手段としての運用にも意欲を見せていたが、「(SNSとの連動に関して)特にどのプラットフォームで展開するかは決めていない」とのこと。そのほか、同システムで使用する3Dキャラクターに関して、特定のモデルは定めておらず、今回披露された出水アナウンサーをイメージしたキャラクターも、BS-TBSが独自に発注を行って制作したもの。満倉准教授は、今後の展開によっては、ユーザー側が制作したキャラクターを活用する流れともありうるだろうと語った。
なお、テレビ局による3Dキャラクターの活用としては、2012年10月にフジテレビが展開した3Dの「デジタルアナウンサー」・
杏梨ルネが挙げられる。漫画家の江川達也がキャラクターデザインを手がけた同キャラクターは、深夜帯番組「にっぽんのミンイ」やドワンゴとニワンゴが運営する動画サービス「niconico」の「ニコニコチャンネル」内の番組「ルネパン」などに出演した。