長崎大学は4月26日、骨格の形成異常や早期老化を伴う全身性の発達異常を特徴とする「コケイン症候群」、日光過敏や皮膚がんを発症する「色素性乾皮症」、骨髄機能低下や白血病を発症する「ファンコーニ貧血」の3種の遺伝病を併発する新しい病気の原因が、アルコールの代謝産物であるアルデヒドや各種の抗がん剤などによってDNAに生じる損傷を除去する作用を持つ「ERCC1-XPFエンドヌクレアーゼ複合体(損傷を切り出すハサミ型の酵素)」という多機能なDNA修復因子の遺伝子異常により発生していることを見いだしたと発表した。

同成果は同大原爆後障害医療研究所の荻朋男 准教授、医歯薬学総合研究科の樫山和也 医員らによるもので、詳細は米国の遺伝学専門誌「American Journal of Human Genetics」(2013年5月号)に掲載される予定。

ERCC1-XPF複合体は、抗がん剤の投与によってDNAに生じる鎖架橋型損傷(2本のDNA鎖がつながるタイプの損傷)を修復する際に必須の因子であり、この因子の個人的な違いは、抗がん剤による治療効果や副作用など薬の効き方、あるいは薬剤耐性の出現によるがんの悪性化などの個人差に寄与していると考えられている。

研究グループでは、今回、対象となった患者由来の細胞では、ERCC1-XPF複合体の「ハサミ機能」の異常により、抗がん剤の1つであるマイトマイシンCに対して強い感受性を示したことから、同複合体による鎖架橋型損傷の修復の仕組みについての解析を進めることで、今後、抗がん剤耐性がんの出現メカニズムや新しい抗がん剤の開発、副作用緩和などにつながる創薬スクリーニングなどの応用研究が進むことが期待されるとコメントしている。