パナソニック 津賀一宏社長

パナソニックは3月28日、中期経営計画「CROSS-VALUE INNOVATION 2015(CV2015)」を発表した。2015年度には、営業利益で3,500億円以上、営業利益率で5%以上、3年間累計で6,000億円以上のフリーキャッシュフロー(FCF)獲得を目指すことを明らかにした。

また、4月1日付で、アプライアンス社、エコソリューションズ社、AVCネットワークス社、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社の4社で構成されるカンパニー制を導入。従来、88の組織に分かれていたビジネスユニット(BU)を再編し、49の事業部体制へと移行した。

白物家電を担当するアプライアンス社では、エアコン事業部、冷蔵庫事業部、コールドチェーン事業部、冷機デバイス事業部、ランドリー・クリーナー事業部、キッチンアプライアンス事業部、ビューティー・リビング事業部、モータ事業部、スマートエネルギーシステム事業部、パナソニックヘルスケアに再編。また、ライティング事業部、エナジーシステム事業部、ハウジングシステム事業部、パナソニックエコシステムズは、エコソリューションズ社に含まれた。

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売上目標ばかりを追わず、営業利益とFCFの獲得を重視

中期経営計画の基本姿勢について、パナソニックの津賀一宏社長は、「一刻も早く赤字事業をなくすこと」「将来をしっかりと見据え、自分たちが力強く進んでいける道筋をつける」という2点を掲げ、「これらに不退転の決意で臨む」とする。

CV2105では、売上高目標を設定せず、営業利益とFCFの計画だけについて目標値を定めている。「意図的に全社売上高目標を作らなかった」と津賀社長が言うように、今回の計画策定では、営業利益とFCFの獲得が重要な柱になっているためだ。

営業利益とフリーキャッシュフローの獲得を最重要目標に掲げる

津賀社長は「事業部は売上高目標がなければ、事業をやっていけない。そのための数字はある。また、事業部が積み上げた上での、全社の売上高数値は社内にはある」と断りつつも、「だが、それをマクロ(パナソニックグループ全体)の売上高として求めることはしない。マクロはマクロのポジションとして目標を策定したのが今回の中期経営計画」だと語った。

その上で、「売上を追うことで、従来の延長線上から抜け出せず、転地が図れない、あるいは体質の転換ができないということは絶対に避けなくてはならない。売上高も追う、利益も追うということでは現場ががんじがらめになる。そのため、売上高目標については、全社計画として設定はしなかった」と説明する。

本来なくてはならないはずの「売上高目標」を中期経営計画の目標に設定しなかったのは、赤字事業をなくす、将来の道筋をつけるという2つの目標を達成するために重要なポイントだといえよう。

事業部制による責任の明確化でより強い成長を目指す

可能な限り頑張るが、プラズマテレビ撤退の可能性はゼロではない

赤字事業では、テレビ事業、半導体事業、携帯電話事業、回路基板事業、光事業の5つの事業での止血が必要とする。特にテレビ事業に関しては、2011年度の2,100億円の赤字を、2012年度には860億円の赤字にまで圧縮したが、これを2015年度には黒字化させる考えだ。プラズマテレビ事業については、「撤退の可能性があるという意味では、ゼロではない。どんな技術も、どんな製品についても未来永劫続いていくわけではない。どこまで頑張れるのかという問題であり、頑張れるだけ頑張ることを決めている」とした。

白物家電を担当するアプライアンス社は、今回の中期経営計画の営業利益達成において、牽引役となる事業。その位置付けは当面変わりそうにない。

主力となる国内向け製品が、海外生産となっていることから、為替の影響が気になるところだが、その一方で、新興国市場における生産体制の強化など、世界で戦うための体制づくりには余念がない。

アプライアンス社は、世界市場を軸とした成長戦略が基本姿勢となっており、これまでの柱だったテレビ事業が止血に追われるのとは対照的な状況にある。

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