女優・沢尻エリカやミュージシャンの内田裕也が登場する「スニッカーズ」CMなど、外資系ブランドの広告を中心に数々の作品を世に送り出しているI&S BBDOのクリエイティブディレクター・本多正樹氏。同氏はかつて自身が通った専門学校「映像テクノアカデミア」で「スニッカーズのTVCM クリエイターが語る、これまでの道。」と題したセミナーに登壇。自身の経験から得た広告表現のコツや、企画の発想に役立つ"3つのキーワード"を披露した。

本多正樹氏
株式会社I&S BBDO コンテンツディベロップメントグループ クリエイティブディレクター 1993年マッキャンエリクソン博報堂(当時)入社。映像テクノアカデミアで広告プランナーコース受講後、1999年I&S BBDO入社。CMプランナーを経て現職。ロンドン国際広告賞、ニューヨークフェスティバル、アドフェストファイナリスト、ACC賞ゴールドなど受賞多数。2009~2012年、クリエイターオブザイヤーノミネート。現在はスニッカーズ、カルカン、ペディグリーなど外資系ブランドを主なクライアントとしている

コマーシャルに必要なのは?

本多氏は、広告代理店のマッキャンエリクソンの営業からキャリアをスタート。クライアントに提案して独自にCMを作るようになり、作ることの面白さを実感する。しかし、業務の中でCMの作り方を学ぶことのできる環境ではなかったため、1997年に映像テクノアカデミアの門を叩き、広告プランナーコースを受講。そこでCMの知識やノウハウを学び、公募賞に応募して賞を得るようになった。そして、宣伝会議賞の受賞パーティーで声をかけられたことがきっかけで、外資系広告代理店のI&S BBDOに転職。現在、クリエイティブディレクターとして、CMづくりに取り組んでいる。

転職した当日から、CMプランナーとして広告制作の現場に飛び込んだ本多氏だが、最初は直感の赴くまま順調に制作を行っていたものの、いつしかスランプに陥り、納得の行く表現が出来なくなっていったという。同氏がそこから抜け出すターニングポイントとなったのは、スニッカーズのキャンペーン「ニケツロデオグランプリ」だった。

この企画では、一人乗りのロデオマシーンを二人乗り用に加工し、それを使ったロデオイベントの参加者を公募した。今までに事例が存在しない企画を実現するためには、不安やリスクが隣り合わせだったという。しかし、リスクを最小限にした上で、イベントが盛り上がるよう、さまざまな要素について、徹底的に事前検証した。こういった努力が実り、企画には多くの反響があり、成功を収めた。この体験によって「怖いものがなくなった」本多氏はスランプを脱出。そして、「新しいことをやろうとすれば、絶対に障害は立ちはだかる。逆に言えば、障害のない仕事はたいした結果を残さない」という教訓を得たという。

「ニケツロデオグランプリ」

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