インテルは18日、定例記者会見を開催し、2013年のUltrabookにおける技術発展の注力の方向性を紹介するとともに、今年に入って新興国モバイル市場向けAtom SoC「Lexington」も投入するなど、急速に立ち上がりつつあるIAベース・スマートフォンの最新状況を報告した。

インテル 代表取締役社長 吉田和正氏。2013年を様々な分野でのこれまでにないチャレンジの年と位置づける

最初に登壇したインテル 代表取締役社長 吉田和正氏は、まずUltrabookについて、2013年は「新しい技術を出していくが、それだけではなく、その技術がユーザーセントリックに、技術がどのように活用されていくのか、という提案を進めたい」と語った。これからの技術において、音声認識やモーション認識などのナチュラルデータの進化に大きな可能性があると説明し、それらが新たなユーセージモデルにつながり、さらに新たな技術の革新を促すからだと説明。あわせて同社が開発中の、ナチュラルデータを利用した技術活用例のライブデモも公開した。

ムーアの法則からはじまるインテルの技術革新の土台の上に、新たな"活用"の革新を提案していく

Ultrabookと深度計のついたカメラでナチュラルデータを処理し、それをUIに活用しているデモンストレーション。このデモで用いた技術は開発者向けに公開中で、同社のサイトからSDKをダウンロードすることもできる。映画マイノリティリポートのようなSFチックなUIは、かなり近い将来に現実のものとなるのかもしれない

さらに吉田氏は、そういった新たな活用、ユーセージモデルの革新は、日本からうまれ、世界に広がっていくとの考えを持っていると語った。日本には、「どのようなデバイスであっても使える環境が揃っている」とし、ユーセージの革新にぴったりの土壌が整っていると指摘する。そして、2013年を、日本発の革新を実現していく最初の年と位置づけていると語った。

また、その革新を活用できる環境造りができるか、目に見えるかたちでデベロッパに提供できるか、さらにユーザーに提供できるか、といった観点で、現在の最適なプラットフォームが、Ultrabookであると説明。そのためインテルでは、スマートフォンなど様々なコンピューティングデバイスがひろがっている中でも、まずはUltrabookにフォーカスした取り組みを優先することを説明した。

これはUltrabookのリファレンス開発機。ディスプレイ部とキーボード部がデタッチャブル式になっている。Ultrabookへの注力は最優先と位置づける

また、活用への注力は強めると言うが、技術への投資も、もちろん強力に推し進めることも確認した。吉田氏は、「すぐれたユーセージモデル、画期的なユーザー体験をうむためには、とにかく、すべて性能が必要で、どのくらいの処理能力が出せるのかですべてが決まると考えている。ハードウェア性能への要求は非常に強いものがある。そのために、とにかくインテルでは、半導体製造や研究開発に、とにかく大きな投資を続けている」と説明する。また、その技術開発の最先端になるのも、やはりUltrabookであることも説明した。

Intelは引き続き大規模投資を継続する

一方で、ここまではUltrabookの存在を強調してきた吉田氏だが、しかしながら、今はUltrabookだけがインテルアーキテクチャ(IA)のすべてではないと、IAベースのスマートフォンへの取り組みにも触れる。同氏は、Intelの共同創業者のひとりであるロバート・ノイス(Robert Noyce)氏の遺した言葉である「Don't be encumbered by history. Go off and do someting wonderful」を引用し、これまでの事業にとらわれることなく、新しいことに向かってすばらしい技術をうみだしていくのが、同社の方針であると話す。昨年の立ち上げから、今年初めには市場拡大を目指す新プラットフォームの投入もあった同社スマートフォン・プラットフォームを紹介した。

過去にとらわれず新しいチャレンジをと、故ロバート・ノイス氏の言葉を引用

同社の執行役員で、技術本部長の土岐英秋氏が、まず2012年のIAベースのスマートフォン・プラットフォームをまとめた。昨年は、開発コードネーム"Medfield"ベースのIntel Atom Z2480を搭載したスマートフォンが、世界中で7機種登場。次いで今年はじめに、市場の急拡大が期待される普及価格帯の新興国向けラインとして、開発コードネーム"Lexington"と呼ばれる新SoCを投入した。これは32nmプロセスの派生SoCで、モデムチップと組み合わせて150ドルIAスマートフォンなどと噂されていたものだ。LexingtonベースのIAスマートフォンは、新興国市場を中心にすでに3機種が発売済みで、4月にも新たに1機種が、エジプト市場で発売予定となっている。

"Clover Trail+"ベースのスマートフォンのリファレンス機を公開するインテル 執行役員 技術本部長 土岐英秋氏

スマートフォン向けSoCのロードマップ

昨年は"Medfield"ベースのIntel Atom Z2480を搭載したスマートフォンが、世界中で7機種登場

今年はじめには新興国向けに普及価格帯の"Lexington"ベースのIntel Atom Z2420を投入。市場の急拡大をねらう

"Lexington"ことIntel Atom Z2420搭載のスマートフォンが実現する機能や性能の特徴

今後のロードマップとしては、年初のCESでの発表があったとおり、Medfieldの後継となる開発コードネーム"Clover Trail+"の投入を控えている。32nmベースの物理デュアルコア構成のSoCで、近日中に「Intel Atom Z2580」などの製品名で登場する。土岐氏は今回、そのリファレンス機も公開するなど、Clover Trail+の開発が順調であることをアピール。また、そのClover Trail+端末では、性能や機能が向上しているだけでなく、スマートフォン本体の厚みが、同社SoCベースの端末では史上最薄となる6.9mmを実現しているデザイン自由度の高さも紹介するなど、電力効率の向上が要因とみられる注目点もアピールした。

Medfieldの後継となる開発コードネーム"Clover Trail+"を投入

"Clover Trail+"のスペック。Medfieldと比較した表だ

"Clover Trail+"スマホの実現する特徴概要

"Clover Trail+"は、Intel Atom Z2500シリーズとして、「Z2580」「Z2560」「Z2520」の3モデルをラインナップする予定