Apple製品ユーザーには馴染みの深いネットワーク共有技術「Bonjour (ボンジュール)」だが、現在この技術を拡張して企業ネットワークで利用できるよう検討が進められているという。これは企業でiPhoneやiPadといったデバイスの利用が増えるなか、「隣のビルのプリンターで印刷したい」といったニーズに応えるためという。

この件はNetwork Worldが報じている。Bonjourはもともと「ユーザーのマニュアル設定不要で自動的にネットワーク接続と共有」を実現する「Zero Configuration」の実現を目指したもので、Apple側の働きかけもあり、Internet Engineering Task Force (IETF)での標準化も行われている。IETFで標準化された技術の正式名称は「Multiicast DNS (MDNS)」であり、「Bonjour」という名称はAppleがMac OS X 10.4 "Tiger"時代にマーケティング名として使用を開始したもので、仕組みとしては一緒だ。ネットワークに接続した時点でネットワーク設定を完了させ、Bonjour (MDNS)に対応したデバイスを発見し、互いにファイルやデータのネットワーク共有を確立するほか、対応プリンターであればそのまま印刷することもできる。

Bonjourは同一LAN内にブロードキャストを送信してネットワークを自動確立する仕様のため、対象範囲が同一セグメント内に絞られるほか、ブロードキャストのためにある程度のネットワーク帯域が占有されるというデメリットがある。そして何より、ルータを越えて広範囲のネットワーク内で通信を確立することができないというのが活用場面を制限してしまうたm、今回「MDNS Extensions」または「MDNSext」の名称で新しいワーキンググループを設置してIETF内でエンタープライズネットワーク向けの拡張機能の検討を始めたというわけだ。

MDNSの仕様をまとめたAppleエンジニアのStuart Cheshire氏によれば、当初のBonjourはホームネットワークをターゲットとしていたが、10年あまりの間に非常に一般的な技術となったという。すべてのネットワークプリンタはBonjour対応であり、DVRのTiVoやカメラといった製品でさえ対応が進んでいる。そしてiPadやiPhoneを利用したユーザーの中に「隣のビルのプリンタで印刷できないか」といったニーズが増えつつあることを受け、次のステップへと踏み出すことを検討したという。