シーメンス・ジャパンとシーメンスPLMソフトウェアは10月31日、都内で会見を開き、シーメンスが目指すソフトウェアによる製造現場の変革に関する説明を行った。

シーメンスは主に「インダストリー」「インフラストラクチャー&シティーズ」「エナジー」「ヘルスケア」の4つのセクターで事業を構成しており、シーメンスPLMはこの中のインダストリーセクターを中心に連携を行っている。

シーメンスは4つのセクターに分かれてビジネスを行っている

シーメンス・ジャパンの専務執行役員 インダストリーセクターリードのミヒャエル・トーマス氏

シーメンス・ジャパンの専務執行役員 インダストリーセクターリードのミヒャエル・トーマス氏は「市場からは開発サイクルの短期化、エンジニアリングの効率化、高い投資保護、迅速にコミッショニングが可能か否か、そして高いシステム有用性などの実現が求められている。我々シーメンスとしては、原料・設計から生産に至るまで、工場に集まるあらゆるものに対する答えを提供することを目指している」と事業の方向性を示す。

そうした答えの提供に重要になってくるのが産業用ソフトウェアだという。シミュレーションを使って、仮想的に部品、装置、そして工場を構築。それらを一元的に管理するためのPLMやMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)などを通じて実現することで、TATの短縮を果たすことが可能となる。具体的には、「PLMを柱に、MESによる工場の実際の情報を設計にフィードバックしたり、プラントエンジニアリングやオートメーションエンジニアリングを包括していくことで、製品と生産のインテリジェントなライフサイクルの作成が可能になる」とする。

シーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長 兼 米シーメンスPLMソフトウェア バイスプレジデントの島田太郎氏

「シーメンスがUGS(現在のシーメンスPLMソフトウェア)を買収したのが2007年。以降、この5年間で大きな枠としての産業用ソフトウェアの統合に向けた取り組みを進めてきた」とシーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長 兼 米シーメンスPLMソフトウェア バイスプレジデントの島田太郎氏は語る。例えばPLMとMESの統合が進められており、これにより工場で実際に何が起きているのかを理解しやすくなったという。「ERPとMESの連携や融合なさまざまな企業が進めてきたが、PLMとMESの統合は誰もやってこなかった」とするほか、製造計画データの連結・転送としてPLMソフトウェア「Teamcenter」とDirect NC(DNC)の連携を図ったことで、NCのさまざまな情報をTeamcenter内で管理できるようにするなどの取り組みが進められてきたという。

また、シミュレーションのさらなる活用として、「バーチャルコミッショニング」にも取り組んできた。工場でロボットが効率良く動くためには作業教育が必要となるが、これを現場で行うのではなく、シミュレーション上で行うことで現場の負担軽減などを図ろうというもの。ただし、実際の工場では、複数のロボットが連携して稼働したりするため、そうした問題を考慮する必要があり、そうした一連の連係動作などは制御ソフト側の役割となる。「これを実現するためには工場のオートメーションを管理するPLCと連携する必要がある。そこまでデジタルに含めてシミュレーションを実現しなければ実際に使えるものにはならない」と、簡単にシミュレーション上に作業ロボットを配置すれば良いという問題ではないことを強調する。

「例えば自動車の生産ラインで、新しい車種を生産しようという場合、作業ロボットにプログラムを入れ、デバッグを行い、そして実評価を行って初めてラインとして稼働できる。この間、ラインは止まってしまっているわけで、フル稼働状態で数秒で1台できる、といって見ても、その性能を発揮することはできないこととなる」とのことで、こうした実機による評価を除く一連の作業をシミュレーション上で実現することで、ライフサイクルプロセスは大幅に短縮することが可能になる。「実際の制御技術を理解していなければ、本当に使えるシミュレーションはできない。シーメンスのインダストリーセクターが実際に産業機器などを手掛けているからこそできることであり、他社は簡単に真似できない」と島田氏は胸を張る。

従来のシステムでは工場にロボットを設置して以降もプログラミングやデバッグ作業などで時間が浪費されていたが、それらをシミュレーション上でチェックできるようになれば、その時間を浮かせることが可能となり短TAT化を図れるようになる。そのためには様々なソフトウェアが連携して、かつ使いやすい状態で提供されなければならないという

なお島田氏は最後に「UGS買収後の5年間、シーメンスインダストリーセクターと一緒に地道にそうした取り組みを積み重ねてきたが、実際のものづくりの現場で本当の意味で役に立つためには、こうした取り組みを地道に行っていくしか方法はない。こうしたハードウェアとソフトウェアの双方が組み合わされることで、シーメンスが考えている製造現場の変革が生み出されていくこととなる。将来的にはPLMという世界を超えて、本当の意味での産業用ソフトウェアが生み出されていくこととなる」と今後もシーメンスインダストリーセクターとシーメンスPLMが連携していくことで、製造業に新たな価値観を届けられるようになるとした。

シーメンスのインダストリーセクターとシーメンスPLMソフトウェアが過去5年で進めてきた統合プロジェクトの概要