電子署名の新機能

そして最後の電子署名はPDFに相手の電子署名を求める新機能。従来のAdobe Reader Xにはなかった機能である。PDFに自身の署名を追加するだけではなく、相手にPDFを送信し、署名を求める機能が備わった。具体的には2010年に買収して自社サービスの一つに加えたAdobe EchoSignを使用し、PDFの自動アップロードや電子メール送信機能を実行するソリューションを用意している。

ユーザーは指示に従って電子メールアドレスの入力を行い、依頼を受けたユーザーも電子メールに記載されたPDFを確認し、リンクをクリックするだけだ。海外ではサイン、国内では印鑑を用いて案件を承認するシーンが多く存在するだけに、同機能が無償使用可能なAdobe Reader XIに加わった意味は大きい(図05~09)。

図05 ツールバーの「署名」や<ファイル>メニューの<文書に署名を依頼>で、電子メールを持つ特定の相手にPDFへの署名を求めることが可能になった

図06 PDFのアップロードが完了すると、自身と相手の電子メールアドレスを入力し、<送信>ボタンをクリックするだけだ

図07 電子メールを受け取ると、中にはPDFのサムネイルと閲覧用のリンクが用意されている

図08 リンクをクリックするとAdobe EchoSignのWebページが現れ、PDFの確認と署名の操作および返信が可能になる

図09 PDFに自身の署名を加えることも可能だ。画面のように画像ファイルを挿入することもできるが、タッチ操作可能な環境であれば直接署名を記入する

従来はPDFの閲覧や印刷にとどまっていたAdobe Readerだが、前バージョンから少しずつ製品版の機能を備えるようになり、最新版では校正や書名といった機能も備えるようになった。ビジネスを包括的に扱える機能を踏まえると、サードパーティ製PDFリーダーとの機能差が大きい。これらの機能を使用するのであれば、Adobe Reader XIは選択肢の中でも優位に立つはずだ。

なお、Adobe Reader XIをインストールすると、自動的に「Adobe Reader and Acrobat Manager」というプログラムがスタートアップに加わり、「Adobe Acrobat Update Service」というサービスが組み込まれる。名称からもわかるようにAdobe Reader XIのアップデートをバックグラウンドで実行するというものだが、気になる方はスタートアップから同プログラムを、サービスから同サービスを無効にするとよい。

ただし、セキュリティアップデートが行われた際、自動的に通知されることはなくなるため、<ヘルプ>メニューにある<アップデートの有無をチェック>から手動更新する必要がある。執筆時点では更新プログラムが存在しないため、同プログラムやサービスが停止した状態で正しく更新されるか検証できないが、上記操作は自身で対応できる方のみ行ってほしい(図10~12)。

図10 Windows 8のタスクマネージャーで確認すると、「Adobe Reader and Acrobat Manager」がスタートアップに加わっている。<無効にする>ボタンで同プログラムを無効にすることも可能だ

図11 同操作を行う場合は、サービスから「Adobe Acrobat Update Service」のプロパティを開き、スタートアップの種類を「無効」にするを選択するとよい

図12 <ヘルプ>メニューの<アップデートの有無をチェック>をクリックすると、アップデートの確認が可能だ

阿久津良和(Cactus