NTTは9月20日、フジクラ / 北海道大学 / デンマーク工科大学(DTU)との産学連携において、12個のコア(光信号の通路)を持つ1本の光ファイバーで、毎秒1ペタビットのデータを52.4km伝送することに成功したと発表した。毎秒1ペタビットという数値は、2時間のハイビジョン映画5000本を1秒間で伝送可能な速度に相当する。

1本の光ファイバーに複数のコアを持つマルチコア光ファイバーは、従来ファイバーと同等以上のデータの低損失特性を実現しつつ、コア間の光信号が互いにもれて交じり合ってしまうクロストークを低減することが重要になる。しかし、従来構造のマルチコア光ファイバーは、コア数を7以上にするとクロストークによるコアあたりの伝送効率が劣化することが課題となっていたという。

DTUの盛岡教授は、トラフィックの増加を支え続ける長距離大容量光ネットワークの実現に向けて、新しい空間的構造を持つ光ファイバーを用いた空間多重光通信技術の研究開発を提唱。NTT / フジクラ / 北大 / DTUはこの提案の有効性確認に向け、それぞれの持っている技術を結集し、伝送技術の研究を進めてきた。

大容量伝送技術

実験構成と要素技術諸元・各機関の役割

この研究で、コアをほぼ同心円状に配置した新しい構造の12コア-マルチコア光ファイバーと入出力デバイスが開発され、従来課題であったコア間の光信号の漏れ(クロストーク)が低減可能になった。また、光の波の性質(位相・偏波)を利用して多数の信号状態をつくり、光信号を効率よく伝送する偏波多重多値QAMデジタルコヒーレント技術も用いられ、コアあたりの伝送効率が、従来のマルチコア光ファイバー伝送と比較して4倍以上に高まった。

12コア-マルチコア光ファイバ

マルチコアファイバ入出力接続技術

偏波多重32QAMデジタルコヒーレント光送信回路

こういった技術革新により、1コアあたり毎秒84.5テラビット伝送容量(1波長あたり380Gbps容量 x 222波長チャネル)が実現し、12コアのマルチコア光ファイバー1本で、総容量毎秒1.01ペタビット(=12 x 84.5テラビット)の信号を52.4kmにわたり伝送可能であることが実証された。これは1本の光ファイバーとしては世界最高の伝送性能になるという。

今回の成果は、従来の光ファイバーを用いた研究レベルの伝送容量記録と比べて10倍以上の大容量化を実現するとともに、空間多重光通信技術による実現目標領域において、マルチコア光ファイバーを用いた伝送容量の世界記録である毎秒305テラビット(伝送距離:10km)を更新するものとなっている。実験結果を見ると、それぞれのコアにおいて通信品質を示すQ値が均一で、コアごとの伝送品質のばらつきやエラーのない高品質の通信が可能であることがわかる。

実験結果