現時点で高級炊飯器において各社が追求するポイントは、古来からのかまど炊きの炊飯方法を炊飯器でいかに再現し、美味しく炊き上げるか。そしてそのために各社が工夫と差別化を凝らしているひとつは内釜の材質や構造へのこだわりだ。鉄、炭、銀、銅、土鍋、真空魔法びんといった素材で、発熱効率や熱伝導性、熱対流といった効果を追求し、かまど炊きの釜に近づける努力を、職人や専門メーカーとのコラボレーションなどを通じて各社がしのぎを削っている。

象印マホービンのNP-ST10では、IH加熱との相性が良い"南部鉄器"を採用

東芝ホームアプライアンスのRC-10VPFでは、炊きムラを抑える効果があるという羽釜形状の内釜を採用

もうひとつの競争ポイントは炊飯方式だ。IHによる火力コントロールや圧力の制御、スチームや真空機能、超音波などの技術を採用することにより、お米の旨みや風合いを引き出したり、各社独自の機能で差別化を図っている。お米の炊き加減や炊き分けだけでなく、おかずやデザートに至るまで炊飯器で調理ができる機能やメニューの豊富さも高級炊飯器では必須の要素だ。

その他、炊飯、調理以外の面では、蒸気を出さない仕組みや、変質の少ない保温技術、消費電力の抑制、メンテナンスのしやすさといった要素も改良への惜しみない努力が見られるのが高級炊飯器の特徴。各社ともに細かい部分で一長一短はありながらも、消費者が製品選びをする際にトータルで見た場合に総合点、平均点が総じて高く、結局のところ、設置場所やサイズ、その他個人によって外せないポイントで選ばざるを得ない、際どい部分で差別化が図られていることを実感する製品ばかりだ。

これに加えて、最近の新しい流れとして新製品を投入したのがパナソニックと前述したシャープだ。パナソニックはスマホと連携できるIH炊飯器「SR-SX2シリーズ」を6月に発売。シャープは洗米機能を持つ「ヘルシオ炊飯器」を9月に発売することを発表している。いずれもこれまで高級炊飯器の主流であった"美味しいご飯を炊く"という技術に対して、少し違った形でアプローチする。どちらも間接的には"美味しいご飯"につながる機能だが、どちらかというと操作性や手間を省く利便性を重視した機能の搭載だ。

スマートフォン連携機能を備えるパナソニックの「SR-SX2シリーズ」

シャープの「ヘルシオ炊飯器」シリーズは、30秒~1分で150回転して洗米する"かいてんユニット"を備える

説明してきた通り、場合によっては10万円以上もする高級炊飯器は、さすがにどの製品をとってもスペックは高く、これまで低価格の炊飯器で満足していた人には、違った次元の美味しいご飯と利便性を提供することは間違いない。味に関しては、好みが大きく左右するものであり、同じ機種で炊いたとしても米の種類や水加減、炊き方によって一律ではないので一概に評価するのが難しい。選ぶ際には、量販店等でサンプルが味見をして納得ができれば、あとはサイズや使い勝手といった物理的な要素やデザインの好み、その他独自の機能で個人的に外せないものをピックアップして絞り込むとよいだろう。

次回からは、この夏以降発売の高級炊飯器の新製品3機種の特徴や使い勝手、試食した感想や雑感などをレビューする。