MacのUSB Audioデバイスとして使う

PHA-1にはもうひとつ、USB Audioデバイスとしての"顔"がある。これが本製品第2のポイントで、ポータブルヘッドホンアンプとしての価値を高めることに成功している。

USB Audioデバイスは大きく2種類に分類できる。ひとつは「USB Audio Class」というUSB.orgが定めた規格に沿うもので、通常USBポートを備えたパソコンのOSではドライバーが標準装備されている。もうひとつはUSB Audio Class準拠ではない、独自のドライバーを使用するものだ。PHA-1は前者のUSB Audio Classに準拠しているため、Mac/WindowsともUSBポートに接続するだけでオーディオデバイスとして認識される。

リアパネルのスイッチをUSB Audioに切り替えてMacに接続すると、システム環境設定の「サウンド」パネルに出力先として表示される

USB Audio Classには「1」と「2」があり、前者が対応するサンプリング周波数の上限は96kHz/24bit、USBの転送速度は12Mbpsだ。2009年に改訂版として登場した後者は、サンプリング周波数の上限が192kHz/24bit、USBの転送速度はHigh Speed規格準拠の480Mbpsに引き上げられている。入力可能な96kHz/24bitというスペックと、システム情報で確認した情報からすると、PHA-1が対応する規格はUSB Audio Class 1と判断できる。

USB Audio Class 1/2には「同期(Sync)」と「非同期(Async)」という2つの転送モードが用意されており、PHA-1では非同期モードをサポートしている。USBホストコントローラの12MHzクロックにUSB Audioが同期する同期モードでは、パソコン内部のクロック精度に起因するジッター(波形信号の時間的な揺らぎ)を排除できないが、非同期モードではUSB Audio機器側にあるクロックが参照される。その結果正確なD/A変換が可能になり、音質という大きなアドバンテージにもつながっている。

ところで、USB Audioとして動作するPHA-1は96kHz/24bitの信号しか入力できないようだ。これはOS Xに付属の「Audio MIDI 設定」でフォーマットを「96kHz/2ch-24bit」以外に変更すると、正常に音声を出力できなくなる点から判断した。Macユーザ御用達のサウンドプレイヤー「iTunes」では、音楽CDの44.1kHz/16bitというサンプリング周波数が一般的だが、これを再生しても破綻なく聴かせてくれるのは、iTunesが依存するCore Audioが96kHz/24bitへとアップサンプリングしてくれるからに他ならない。

OS Xに付属の『Audio MIDI 設定』でPHA-1の情報を表示したところ。この画面でフォーマットを変更しても、正常に音が出ない

余談ついでに、PHA-1でよりよい音を楽しむのであれば、「Audirvana」というサウンドプレイヤーをお勧めしたい。このソフトはCore Audioに依存しないサンプリング周波数変換エンジン(iZotope社のライセンスを受けた高精度な「iZotope 64-bit SRC」)を搭載、iTunes/Core Audioとは別次元の精細な音を聴かせてくれる。直接Macのステレオミニジャックに接続したヘッドホンではわかりにくいかもしれないが、PHA-1で聴けばその差は歴然だ。

高機能サウンドプレイヤー「Audirvana」。WAVEやFLACなど、ハイレゾ音源として利用される各種オーディオフォーマットに対応している

Audirvanaの環境設定パネル。デフォルトではアップサンプリングが無効化されているため、設定を変更するのを忘れずに

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