Analog Devices(ADI)は6月26日、プラットフォーム安定化やナビゲーション、計装アプリケーションなどの方位センサ融合アルゴリズムを組み込んだ10自由度(DoF) MEMS IMU(慣性測定ユニット)「ADIS16480」を発表した。

同製品は、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度センサ、3軸磁気センサ、圧力センサ、同社のBlackfinプロセッサ「ADSP-BF512」を1つのパッケージに集積したもの。センサ入力を常時融合する拡張カルマンフィルタ(EKF)が組み込まれており、高精度で位置検出ができるだけでなく、設計時間とコストを低減する。用途としては、商用航空機や軍用ナビゲーション、無人操縦車、可動プラットフォーム、産業用ロボットなどを想定しており、絶えず動き続け、さらにその動きが複雑でダイナミックなアプリケーションであっても、リアルタイムで位置測定が可能となっている。

EKFは、誤差のある観測値を用いて、ある動的システムの状態を推定あるいは制御するための無限インパルス応答フィルタの一種で、これによるフィルタリングは、ノイズが多く変動の多い過程において、複数の時系列サンプリングを行い、それらを状態予測演算にかけることにより、現在の状態を推定する数学的アルゴリズムを採用している。「ADIS16480」に組み込まれたEKFは、MEMS IMUのモーションセンサ入力を高度に組み合わせることで、絶え間なく動きがあるような、動きの予測が困難で複雑な動作条件下であっても、高精度な位置決定データを提供する。

他のMEMS IMUでは、コード開発やテスト、外部プロセスに多大な労力を費やさなくてはならない。「ADIS16480」は、EKFをBlackfinプロセッサを組み込むことで、作業に要する時間とコストを削減できる。また、0.05度の精密アラインメントや、位相マッチングされた座標軸のサポート、0.01%の低い非線形成が特徴となっている。それぞれのMEMS IMUは工場出荷時に校正が行われるので、開発や実装の時間とリスクを低減できるだけでなく、温度変動に対する感度も低い。

この他、3軸デジタル・ジャイロスコープがダイナミックレンジ±450度/s、動作時バイアス安定性が6度/h、角度ランダム・ウォークが0.3度/√h、3軸デジタル加速度センサが±10g、3軸デジタル磁気センサが±2.5ガウス、デジタル圧力センサが300~1100mbar、高速起動時間が500ms以下、衝撃耐性が2000g、SPI互換シリアルインタフェースを有する。

なお、パッケージは47mm×44mm×14mmの24ピン・コネクタ・インタフェース付きモジュール。価格は1545ドル。すでにサンプル出荷および量産出荷を開始している。この他、10自由度のMEMSセンサ「ADIS16448」と6自由度のMEMSセンサ「ADIS16485」も合わせて発表している。

10自由度のMEMS IMU「ADIS16480」