NTTドコモ新社長の加藤薫氏が、中国・上海で開催されたモバイル関連の見本市「Mobile Asia Expo 2012」のキーノートに登壇した。加藤社長は、ドコモが提供するサービスを紹介するとともに、「スピード&チャレンジ」のスローガンをアピールした。
加藤新社長は、6月19日に山田隆持前社長の後を引き継いで社長に就任。20日には日本国内で就任記者会見に臨み、その後上海に渡ってこのキーノートへ参加した。加藤社長の海外デビューとなる今回の講演では、これまで山田前社長がアピールしていた「ドコモクラウド」などのサービスへの注力の方針を継承した形で行われた。
加藤社長はまず、経営方針を「スピード&チャレンジ」として、イノベーションの推進によるサービスの進化、融合による新たな価値創造の2点を目指す。「情熱を持って新たなチャレンジをしたい」と加藤社長は話す。また、携帯事業者として研究開発に対する強みもあり、「人々の毎日の生活で障害のないモバイルコミニュケーションが取れるようにしたい。人をつなぐ社会インフラを維持し、スマートライフを実現する」ことを目指すとしている。またドコモは、2015年までの中期ビジョンで、スマートライフの実現に向けて、モバイルを核とする総合サービス企業を目指すとしている。加藤社長は、これを実現し、加速させるのが新たなネットワークサービス「ドコモクラウド」と語る。
続いて、ドコモの現状を説明。同社では2011年第4四半期にはパケットARPUが全体の57.6%に達し、データ収益が伸び続けている。今夏モデルでは11機種のLTE対応スマートフォンを投入し、2012年全体では1,300万台の端末販売を目指す。加藤社長は、そのうち60%の750万台がLTE対応スマートフォンになるとの予測を示し、次世代通信への移行の進展を強調。2012会計年度にはLTEのサポートエリアも約70%に拡大、基地局数は21,000、設備投資額は1,700億円になるとアピールする。
ドコモのスマートフォン向けポータルサイト「dメニュー」では今年3月末で約900のコンテンツプロバイダー(CP)が4,600サイトを提供しているが、来年3月末にはこれを1,000CPによる1万サイトまで拡大したい考え。ドコモ直営のコンテンツマーケット「dマーケット」では、音楽、ビデオ、電子書籍、アプリの各ストアを提供しており、そのうちビデオストアは開始後5カ月で100万契約を達成したと強調。さらにアニメストアも開設し、今後の拡大をアピールする。スマートフォンでは「どれが使いやすくて安全なのか、見つけるのが難しい人もいるのではないか」と加藤社長。安心安全で多くの人が楽しめるであろうというものを提案する のがdメニューやdマーケットだと話す。
前述のドコモクラウドでは、パーソナルクラウド、ビジネスクラウド、ネットワーククラウドの3種類のサービスを展開。ネットワーククラウドは、ドコモが自社網のユーザーに対してクラウドサービスを提供する仕組みで、これは、端末に依存したサービスによって携帯網が「土管化」することを避けるために、「どの端末にもサービスを提供できる」(加藤社長)ことがポイントだ。主にアップルのiOS端末やApp Storeなどをはじめとした全体のサービスを念頭に置いたものだが、端末に縛られない点をアピールする。
例としてはしゃべってコンシェル、通訳電話、メール翻訳コンシェルを示しつつ、加藤社長は「新しいマーケットを創造していきたい。そのために多くのパートナーと提携し、スマートライフをカスタマーに提供する」と意気込みを語る。
新市場としては、メディア・コンテンツビジネス、電子商取引、M2M、環境・エコロジービジネス、金融・決済ビジネス、メディカル・ヘルスケアビジネス、決済ビジネスをあげた。また、その取り組みとしてNOTTVによるメディアビジネス、日産リーフやPlayStation VITAにおけるM2Mビジネス、独net.mobile、ベトナム・VMGなどと提携しての海外を含めた決済ビジネスを紹介した。
加藤社長は、「iモードでクローズドなエコシステムを作った。イノベーターとしてiモードを開発して誇りを持っているが、オープンなAndroidのOSの上で、オープンな世界でネットワークにインテリジェンスをつけたいと思っている」と強調。さらに「キャリアとしては珍しく研究開発の機能を持っているが、できることは限られているので、世界中のパートナーと手を組んで、モバイルを先導する会社になりたい」と意気込みを語りつつ、「1つの夢、ゴールは、スマートフォンがバトラー(執事)かフレンドになることだと夢見ている」と目標を語る。「私もそうだが、個人の客はわがまま。何でもやりたいし、(逆に)なにをしていいか分からないから教えて欲しいということもある。このバランスを取って、一番いい方法でユーザーに寄り添っていくスマートフォンを出していきたい」と加藤社長は話している。
(記事提供: AndroWire編集部)