東芝は7日、開催中のCOMPUTEX TAIPEI 2012において記者説明会を開催し、今回が世界初公開となるWindows RT搭載マシンや、次世代Ultrabookラインナップなどを公開、ならびに同社のグローバル戦略の概要を紹介した。東芝デジタルプロダクツ&サービス社 営業統括責任者の檜山太郎氏が語ってくれた。
今回が世界初公開となる「Windows RT」搭載製品
Windows RTは、従来までのx86プロセッサではなく、ARM SoC上での動作を前提とした、Windows 8のエディションのひとつで、ARM版Windows 8などとして知られているもの。COMPUTEXではASUSなどがこのWindows RT搭載マシンを公開しているが、東芝もWindows RT分野へ参入することが明らかとなった。
今回公開されたのは2モデルで、ともに今回、世界で初めて公の場に披露されたものだという。ひとつめのモデルはタブレットタイプで、専用のキーボードドックを有しており、これにドッキングすることで通常のノートPCのスタイルでも利用できるというもの。2つめは純粋なクラムシェルタイプで、非常に薄型軽量なサイズのモバイルノートPCとして利用できるものだ。
Windows RTとARM SoCを搭載するということ以外、詳細なスペックや動作状態などは伏せられたが、同社グローバルモデルとして製品化の予定であり、日本国内向けの方向でも検討しているとのこと。タブレットではNVIDIA Tegraの採用例が多い東芝だが、本機のARM SoCがどこのものなのかは、現時点では公開されなかった。
"多様性"がキーワードのUltrabook次世代モデル
東芝のUltrabook次世代製品は、大きく4系統のモデルが予定されている。最初の世代では、13.3型のdynabook R631を、世界最軽量・最薄という特徴で展開していた。Ivy Bridgeプラットフォームがベースの次世代では、"多様性"をキーワードに、それぞれ特徴のある幅広いラインナップを展開する。
まずdynabook R631のボディを引き継ぎ、薄型軽量を特徴とする13.3型モデルは、内部構成は次世代へと刷新して継続。そして新たに、スタンダードであることを特徴とする14型Ultrabookを追加する。さらに、21:9のシネマサイズディスプレイが象徴的な、エンタテイメント機であることを特徴とする14.4型のモデル。4系統のモデルに最後に、ディスプレイスライド機構でタブレット型にも変形するコンバーチブルUltrabookというラインナップだ。
東芝の次世代Ultrabookのひとつ。最大の特徴は21:9のシネマサイズの液晶ディスプレイだ。14.4型の1792×768ドット解像度。この大きさにした理由は、13型ノートに近いフィーリングで使えるためだとされた。ちなみに本体サイズは横幅368ミリ、縦200ミリとのこと |
x86とARM、Windows 8/RTとAndroidの住み分けの鍵は「クリエイション」
さて、東芝では昨年、50年の歴史を持つTV事業と、30年の歴史を持つPC事業を統合した。その統合で設立されたのが、東芝デジタルプロダクツ&サービス社だ。統合の経緯や効果などは、既に様々なところで報じられているため、ここでは割愛する。ここで注目したいのは、Intelが主導するx86プロセッサと、ARM陣営のビジネスが、個人向け、法人向け問わず、パーソナルなコンピューティング・デバイスの部分で、"真っ向勝負"になりつつあるという状況だ。
そのような中で東芝は、ARMベースのAndroidタブレットから、伝統的なx86ベースのWindows PCまで取り扱うメーカーであり、今回の次世代製品ではついに、ARMベースのWindowsとx86ベースのWindowsで、さらにタブレットとクラムシェルまで混在するという製品展開も行う。デバイスの見た目だけで選んでも、それはx86タブレットなのかARMノートなのか、という状態になるわけだ。
Androidタブレットも様々なバリエーションで展開を計画。Windows RTマシンやUltrabookも含め、まさに"フル"ラインナップを1社で揃える |
さらにひろく、TVまでも含め多様なニーズにマッチできる包括的な機器を揃え、クラウドでそれらの連携も狙う |
個人、法人向けともに、住み分けは非常に困難なように思えるが、檜山氏は、「住み分けは可能」と説明する。
まず前提として、同社の戦略では、この市場(よりパーソナルなコンピューティング・デバイスの市場)は出来て間もないものであり、最初にやるべきことは、まずは様々なユーザーのニーズに応えられる、多様なデバイスを展開することで、「ユーザーのユーセージ(使い道)がどうなって行くのかを見ることにした」(檜山氏)のだという。これが、広く多い製品ラインナップを展開する根拠となっている。
その中で、住み分けの鍵となるのは、クリエイションとコンサンプションだと、檜山氏は考えているのだという。Windowsデバイスの中で、ARMとx86であれば、「Intelのx86プロセッサには"パワー"があり、クリエイションであればこれを選択する。そしてARMには、コンテンツ消費などの用途に限れば、サクサクと軽快な動作を少ない電力で出来るので、コンサンプションであればこれを選択する」(檜山氏)という。
「アップルのiPadがでた時、凄い伸びを見せて、その時はパソコンはタブレットに食われるという感じになった。しかし、実際にはx86系のパソコンの売り上げが業界全体で確実に伸びてきており、東芝でもやはり伸びていた。そこで、どうやらユーザーはふた手に分かれたのではないか、コンサンプション(消費)系と、クリエイション系に分かれたのではと見ている。」(檜山氏)
コンテンツクリエイト用途などのアプリケーションにはコンピューティングパワーが必要であり、ここでは性能/電力の効率で"x86にARMは及ばない"。コンサンプションに限るのであれば、"ARMで十分"というのが明確といった考えだ。檜山氏はまた、「コンシューマの若い世代にすれば、スマートフォンから入ったユーザーなのか、それとも、クリエイションから、つまりPCから入ったユーザーなのかで、まずはわかれるのではないか」と、世代による変化が想定されることも説明した。どちらにせよ、まずはユーザーの反応を見る、という点においては、確かにラインナップの広さは有効にはたらくだろう。