京都大学は6月4日、SiCを用いた耐圧2万Vを超える半導体素子を開発したと発表した。成果は、同大工学研究科 木本恒暢 教授、須田淳 准教授、丹羽弘樹 博士後期課程学生らによるもの。

独自のSiCの結晶成長技術と加工技術、電界集中を緩和する構造の採用、および表面保護技術を集約し、2万V以上の耐圧を示すPiNダイオード(整流素子)を実現した。

成果のポイントは大きく3つ。1つ目は厚さ180μmの高純度SiC結晶を用い、超高耐圧を得るための下地を完成させた。従来は10~50μm厚程度となっている。2つ目は、電界集中を緩和する独自の素子構造(空間変調型接合終端構造)を用い、高精度数値解析によって構造の最適設計を行った。この結果、180μm厚の高純度SiCで作製した結晶に対して理想的な高耐圧を達成した。3つ目は、ポリイミド膜を用いた表面保護を施し、表面での放電を抑制した。

中でも、2つ目の素子構造の工夫は重要で、通常の素子では、接合端部などで電界が局所的に高くなる電界集中により、結晶の厚さと不純物密度で決まる理論耐圧より低い電圧で素子は絶縁破壊を起こしてしまう。特に、今回のような超高耐圧素子では、理論値の約半分(50%)程度の耐圧しか得られないことが多く、超高耐圧素子の実現を阻んでいた。今回、電界集中を緩和させるのに有効な構造を考案し、SiCで構成されたpn接合の周辺部に、局所的にアルミニウムを適切な密度でイオン注入を行った構造を形成することで、2万V以上の耐圧を達成した。今回得られた耐圧約2万2000Vは、理論耐圧の80%以上に達している。今後、SiC単結晶の厚さをさらに増やすことにより、3万V以上の耐圧を達成することも視野に入ってきたとコメントしている。

SiC厚膜成長層を用い、空間変調を取り入れた接合終端構造を適用したPiNダイオードの特性。21.7kVの超高耐圧を達成した。