国立遺伝学研究所(遺伝研)は、東北大学大学院生命科学研究科および岐阜経済大学と共同で、カルデラ湖(火山湖)という本来ではない生息地に定着したトゲウオ科の魚「イトヨ」に着目し、その適応機構を詳細に調査して結果を発表した。

研究は、遺伝研新分野創造センターの生態遺伝学研究室の北野潤特任准教授らの研究グループによるものである。研究の詳細な内容は、米科学雑誌「Ecology and Evolution」に掲載された。

外来種は、さまざまな生態学的、社会的な問題を引き起こしている。これら外来種が何故、本来ではない生息地にうまく適応し、在来の固有種を駆逐するまでに定着してしまうのか、その詳しい原因はよくわかっていない。

現在、北日本を代表する3つのカルデラ湖(十和田湖、屈斜路湖、支笏湖)にイトヨが定着しているが、いずれも外来の集団であると考えられる。カルデラ湖は火山で形成された湖であり、そもそも魚類は生息していなかったと考えられているためだ。

遺伝調査の結果、3つのカルデラ湖のイトヨは、別々の独立したイトヨ集団の放流が原因であることが明らかになった。特に屈斜路湖の場合には、複数回の放流が行われ、北米の集団に近い遺伝型を持った個体も発見されていることから、北米からのサケマスの移植事業に伴って持ち込まれたと推定された。

また、十和田湖イトヨの過去50年間の追跡調査の結果、移入直後から体のサイズや形態を著しく変化させて新規環境に適応してきたことが明らかになった。

研究グループは現在、このカルデラ湖のイトヨについてさらに詳細な遺伝的解析を行うことによって、外来種がなぜ形態や食性をうまく変化させながら本来ではない生息地に適応してきたのか、引き続きその遺伝機構の解明に取り組んでいくとしている。

画像1。トゲウオ科のイトヨ