防災科学技術研究所(防災研)は4月18日、世界最大規模の大型岩石試験機を、同研究所が所有している大型振動台を用いて構築したと発表した。4月22日の防災研一般公開に合わせて、公開実験を行う予定だ。

防災科学技術研究所では、地震の発生メカニズムを研究するために、同研究所所有の大型振動台上に、大型実験装置を構築した。通常、大型振動台は大型建築物や構造物の耐震性能の評価のために用いられてきたが、その機能と能力に注目し、地震発生メカニズムを研究するための大型岩石試料を用いたすべり摩擦実験装置に利用することが考案され、製作された形である。

なおすべり摩擦実験装置とは、割れ目断層の食い違い運動である地震を模擬した動きが再現できるように設計された実験装置のことだ。地震時の食い違いがどのように起こるかは、断層の両サイドの面同士の摩擦特性で決まる。

大型振動台が建造されたのは40年以上昔の1969年のことで、これまで、主に建築、土木、機械といった分野の研究に利用されてきた。振動台は動く床を備えた実験施設で、主に床の上に構造物を設置し、その震動特性を調べることに利用されている。

今回、その性能を再検討した結果、地震発生メカニズムを研究するための大型試験機の一部として利用できることがわかった。そこで今回、初めて地震学の研究に利用されることとなった次第である。

実験装置の全景が画像1で、概略が画像2だ。画像1の焦げ茶および画像2のグレーの積み重ねられた2つの直方体が、岩石試料であり、下側の試料は長さ2m、上側の試料は長さが1.5mある。

画像1。大型摩擦試験機の外観

画像2。大型摩擦試験機の構成図

なお、画像2の左側の「反力床」だが、物体に一方向から力をかけるためにはその力を支えることのできる別の物体が必要であり、それが床である場合が「反力床」である。今回の試験機の場合、振動台の動きにより、上側岩石試料が振動台と同じ方向に動こうとするが、その移動を止め、上下の岩石試料間に食い違い変位を生じさせてやらないとならない。その上側岩石試料が動こうとするのを止めるための力を支える床である。

試験はまず、振動台上にプレス(画像1では白、画像2では水色の載荷装置)を構築し、オレンジ色のアクチュエータにより、上側試料を下側試料に押し付けることでスタート。プレスとはロの字のフレームを使った構造物のことだ。最も効率よく圧縮力をかけられるのが、ロの字の形にフレームを組んで、その中で押し合い圧し合いをすることである。また、上側試料は青色のバーにより、振動台外部に固定されている。

振動台が大きい赤矢印の方向に移動すると、上側試料と下側試料との間に食い違い変位(断層)が小さい赤矢印で示すように生じる(画像2)形だ。振動台が動くことによって岩石試料間にひずみが徐々に蓄積されるが、上側試料と下側試料の境界がずれることでそれが解消され、(擬似的な)地震が発生するという流れである。これは、地震発生のメカニズムが、地中岩石の内部に断層ができ、その食い違い運動によって生じることを再現したものだ。

これまで、類似の装置は、国内では、1980年代に東京大学地震研究所がすべり面の長さ1mの摩擦試験機を製作した。海外を見渡せば、米国地質調査所が同時期に製作したすべり面の長さ2mの試験機がこれまでの世界最大の試験機だった。

東京大学の試験機はすべり食い違い量は10cm、米国地質調査所の試験機は1cm足らずであったが、今回の試験機は40cmもの大きなすべりを再現することができ、より現実の地震に近づいた試験を可能としている点が特徴だ(実際の地震では、大規模なものになると数10mに及ぶ食い違いを生じることがある)。防災研所有の大型振動台を用いて製作した今回の試験機は、これらの試験機をしのぐ世界最大規模の試験機といえる。

今回の試験機は、これまであまり行われてこなかった、メートルスケールの岩石が地震時にどのように振る舞うかを模擬的に調べ、巨大地震の発生メカニズムの解明と、それによって生じる地震や津波の発生モデルの研究へ貢献していくことが目的だ。

今後、防災研では、この大型試験装置を用いて、これまで実験室で行われてきたセンチメートルスケールの地震模擬実験と、自然界で発生しているキロメートルスケールの地震現象との間をつなぐべく、さまざまなデータを取得していく予定としている。