インテルは4月13日、同社つくば本社内に、同社ならびに業界各社のテクノロジを活用することで、将来のコンピューティング利用モデルと新しいユーザー体験の創造を目指すという施策のための施設「インテル ヒューマン・インタラクティブ・テクノロジー・アプリケーション・センター」を新設したと発表した。

茨城県つくば市のインテルつくば本社。実は、昨年3月の大震災で多大な被害を受けたこともあり、昨年末までに大規模改装が行われている

その一角に、今回の「インテル ヒューマン・インタラクティブ・テクノロジー・アプリケーション・センター」が新設された。中はデモ展示スペースとミーティング設備などで構成

同施設は、ハードウェアやソフトウェア開発者のコラボレーションの場としての活用に加え、自治体や教育機関、エンドユーザーなどICTを利活用する様々な人々を招き、将来必要なテクノロジ、ユーザー体験を創造する場として運用する予定。新設当初の施設内には、創造のきっかけとするべく、インテルの技術をベースに、業界各社が開発したものも含む10個のコンセプト/テクノロジ・デモンストレーションが展示されている。今後も、新しいテクノロジを活用したデモンストレーション、業界各社とのコラボレーションによって生み出されたコンセプトなどの追加は行われる予定とのこと。

なお、現在展示されている10個のコンセプト/テクノロジ・デモンストレーションの概要は以下の通り。

視線追跡・視線制御 : キーボード入力、音声入力に加わる次世代のユーザー・インターフェース向けテクノロジ。

ゲームセンターの筐体風の成果物。実際中身はシューティングゲームで、視線だけで操作して遊ぶことが出来る。コンピュータのポイント操作のインタフェースとしての利用も考えられており、医療分野でも活用も視野に入れる

TVリンク・コンセプト : TVとタブレット端末の連携で新しいTVの視聴、広告モデルを提案。

タブレットの画面にTVリンクによって番組が表示されている。インターネットと連携して、視聴者特性にあわせた広告を配信したり、番組の感想を他のユーザーと共有して楽しんだりといった使い方ができる

新しいスピーカーシステム : LED電球付ワイヤレス・スピーカーおよびデジタルスピーカー・システム。

右側のタブレットにBluetooth送信ユニットが取り付けられており、再生中の音楽を無線送信している。そして、左側の照明に挿しこまれた電球に、Bluetooth受信ユニットと、デジタルアンプ、スピーカーが内蔵されており、ここから音楽が聴こえる

その電球を取り外したところ、真ん中のふくらんだところにスピーカー類が内蔵されている。電源は電球ソケットからそのままとれるので、電球が挿さるところであれば、どこでも音楽を鳴らすことができる。なぜ電球かというのは、ユースケースが多いからだそうだ。家庭内でのリビングや寝室だけでなく、喫茶店など、確かに意外と使い道が豊富

IP告知システム : 扱いやすいタブレット端末によるIPベースの地域情報サービス。

例えば地震情報などを個人特定で送信することができる。IPベースなので、送信先の個人が送信元のサーバに情報を返す、例えば安否確認といった使い方もできる

HEMS (Home Energy Management System) : クラウド・コンピューティング・ベースのHEMSシステム。

ZigBeeで構築したネットワークで、各電気機器の電力センサからの情報を集約し、どこからでも電力使用状態を確認できるなどのシステムを構築できる

コンピュート・コンティニュアム : 家庭内のデジタルコンテンツを安全に機器間で共有を可能に。

ホームシェア・コンセプト : 家庭内のデジタルコンテンツをジェスチャー操作。

インテルのセキュリティ技術を利用して、家庭内の各個人が持つ写真などのデータを、このデモではTVを中心に集約して楽しめるようにしている。家族みんなで使えるよう、ジャスチャーで複数の人間が同時に操作できるKinectのシステムを採用していた

シニア向けユーザー・インターフェース : 統一されたUIで使いやすい操作方法を提案、コンティニュア対応機器との連携で高齢者の体調を把握。

アプリケーションのUIが大きくタッチ操作しやすいものになっていた。ICカードでアカウントを簡単に識別したりもできる

次世代自動販売機コンセプト : デジタル・サイネージと自動販売機を組み合わせたコンセプト。

これは既に同様のものがJR駅などに設置されはじめているので、目にした方も多いだろう。中身はIntel Coreの高性能プラットフォーム

本体にカメラを内蔵していて、購入者の顔を識別、年齢を推測したりできるといったデモも。例えば、顔情報で個人を認識することで、その人の購買履歴からお勧めの商品を目立たせて表示したり、といった用途が考えられる

ディスカッション・テーブル : PCやスマートフォン、タブレット機器とのデータ連携で、新しいコラボレーションを提案。

タッチUIで会議などでの利用を想定したテーブル型機器。周辺のデジタル機器のデータを無線で直接取り込んだり、本体横にスキャナが設置されていたり、会議参加者が効率よくアイデアを持ち寄れる工夫が盛り込まれている

同施設の新設に際しては、同日、インテル代表取締役社長 吉田和正氏と、技術本部長で同施設のセンター長も務めることになる土岐英秋氏の両氏による、施設オープン記念のテープカットと、記者会見も行われた。

インテル代表取締役社長 吉田和正氏(左)と、技術本部長で同施設のセンター長も務めることになる土岐英秋氏(右)が、施設のテープカットを行った

土岐氏は会見のなかで、同施設が役割を果たすことで、「新たな技術の発信場所として、ICTを活用することで、つくばが日本の、そして世界の中心になれるかもしれない」と、期待を語った。そして吉田氏は、「技術は片思いではいけない」と述べ、「技術の革新が激しく進む時代になり、技術が進みすぎて、使えないものになってしまってはいけない。そしてインテルはシリコン技術の会社であり、メーカーや、サービスの会社では無いわけだが、そういった様々なプレイヤーと非同期で技術だけを進めてしまっては片思いになってしまい、ユーザーに使いやすいものをつくるためには、両想いのコラボレーションが重要。そして、そのコラボレーションのための"場"が必要と考えたこともあり、施設をつくった」と、同施設が新設された理由のひとつを説明した。

同施設について説明する吉田氏

同施設は、技術ショーケースの様にも見えるが、インテルと企業や、さらに幅広く学校・自治体を含めた産学官連携であったり、それらがコラボレーションし、コミュニケーションすることで新しい何かを創造するきっかけとする場としての役割が強い。同社としては、開設当初は、まずは、興味だけでも持ってもらえれば、というスタンスの様だ。興味のある企業や自治体、学校などは、公開されている同社の代表連絡先まで問い合わせして欲しいと求めている。