TANAKAホールディングスは4月12日、田中貴金属グループの製造事業を展開する田中貴金属工業が、 従来の活性金属ろう材に比べて2分の1の材料コストで、セラミックスへ直接接合できる活性金属ろう材「TKC-651」を開発、提供を開始したことを発表した。
セラミックス同士あるいはセラミックスと金属を接合する方法には、セラミックス表面にぬれやすい膜を作るメタライズ法と、ぬれを活性化させる金属をろうに添加する活性金属法の2つがある。メタライズ法は、セラミックスのろう付面へモリブデン(Mo)やマンガン(Mn)などを焼き付けてメタライズ層を作り、その上にニッケル(Ni)めっきを施した後、銀ろう(BAg-8)などで接合する方法で、接合強度および経済性に優れるという利点があるため、さまざまな場面で採用されてきたが、工程が複雑であるという欠点があり、工程の簡略化が長年求められていた。
一方、活性金属法は、ろう材中にTiやジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などの活性金属を添加してセラミックスへのぬれ性(付けやすさ)を良くし、一度の加熱でセラミックスへ直接接合を済ませることができる方法で、メタライズ層が不要という特長がある。中でも最も接合性に優れる活性金属ろう材はAg-Cu-Ti系の合金で、同社でも今回のTKC-651の従来品「TKC-711」が以前より提供されてきていた。
しかし、従来の活性金属ろう材では、Tiの添加率が1.5%を超えると、直径100μmのCuTi化合物が材料中に析出してしまうという課題があった。析出したCuTi化合物は非常に硬く、塑性加工すると変形せずに周りのAgCuのみが塑性加工されてしまうため、薄く細く加工するとCuTi化合物が脱落するほか、細線に加工すると断線の原因となるため、Tiの添加率を1.5%未満に抑えながら、充分なぬれ性を確保するためには、少なくとも板厚が100μm必要であった。また、細線の形状で製造することも困難であることから、材料費が高く、加工性が低いことが活性金属法の普及を阻む障害となっていた。
今回商品化されたTKC-651は、Ag-Cu-Ti系合金の活性金属ろう材にスズ(Sn)を適量添加することで、CuTi化合物がSnTi化合物として微細に析出する組成条件を見出した合金材料で、板厚50μmの箔状や、直径200μmの細線で供給が可能。0.02Pa以下の真空、もしくはアルゴン(Ar)などの不活性雰囲気で、露点マイナス55℃以下の条件下において約790~850℃で加熱すると、1~5分でセラミックスへ直接接合することができるという。また、従来の活性金属ろう材に比べて材料コストを2分の1に低減できるため、メタライズ法からの代替技術として活用できることから、同社では、パワー半導体用ヒートシンクメーカーのほか、装飾品やセラミックス歯科材のメーカーなど幅広い分野のユーザーを対象に販売していくことで、月間500万円の売り上げを目指すとしている。
なお今後は、カスタマニーズに合わせて活性金属ろう材のラインアップを拡充することも視野に、引き続き技術開発を進めていく方針としている。