サクサク動作、快速シャッターのEXILIM ZRシリーズ

左側手前が「EX-ZR200」、その他の3台が「EX-ZR20」

カシオのコンパクトデジタルカメラ「EXILIM」シリーズは、ハイエンドからエントリーまで豊富なラインナップをそろえる。中でも注目は「EXILIM Engine HS」を搭載した高機能ラインの「ZR」シリーズだ。撮影も再生もサクサク動作、そして"高速連写"による多彩かつ便利な撮影機能。EXILIMが目指す"究極のストレスフリー"なデジタルカメラとはどんなものか。最新モデルとなる「EX-ZR20」(以下、ZR20)、最上位モデル「EX-ZR200」(以下、ZR200)の開発を手がけた同社の西坂信儀氏に話を聞いた。

はじめに、大きなキーワードである"高速連写"について軽くまとめておこう。ZR20とZR200では、1秒間に最大30枚の連写撮影/記録が可能だ。これがもっとも分かりやすい"高速連写"だろう。しかし、それだけではない。1回のシャッターで内部的に高速連写を行い合成したのち、最終的に1枚の写真として出力/記録する仕組みも導入されている。この"内部的な高速連写"では、露出などの設定を変えながら連写しているのがミソ。簡単にいうと、仕上がりの異なる複数の画像を合成することで、白とびや黒つぶれを押さえたり手ブレを減らしたり、高品質な高倍率ズーム、ノイズの少ない高感度撮影など、より高画質な1枚の写真を出力するわけだ。

こうした高速連写や画像処理を担当しているのが、ZRシリーズの心臓部ともいえる画像処理チップの「EXILIM Engine HS」。構造的にはデュアルコアのCPUで、複数の処理を並列で実行できる。内部的な高速連写と合成といった複雑な動作も、短時間で処理する能力を持つ。また、ZRシリーズはカメラの起動時間やオートフォーカス時間、レリーズタイムラグ時間、撮影間隔、終了時間といった、動作全般がとても高速だが、それを実現しているのもEXILIM Engine HSの力だ。

ストレスフリーを支える"EXILIM Engine HS"と高速連写

――ZRシリーズは「快速シャッター」をうたっていますが、快速シャッターに注力した発想や狙いなどを聞かせてください。

カシオ計算機 QV事業部 商品企画部 第二企画室 西坂信儀氏

西坂信儀氏(以下、西坂)「まず、自分の子供を撮っているとき、子供の表情は一瞬で、しかも連続して変わりますよね。撮りたいときに撮りたいのですが、この当たり前のことを当たり前にできるデジタルカメラが見当たらなかったのです。連続で撮ろうとしたときに処理中で待たされたり、オートフォーカスが合わないといった悔しい思いをしました。

一方で、弊社が2008年に発表したEXILIMの「EX-F1」という、高速連写やハイスピードムービーといった"高速性"の高いデジタルカメラがありまして、その技術を応用して不満点を解消できるような製品を作れたら、というのがきっかけです。

具体的には、オートフォーカス、撮影間隔、レリーズタイムラグなどの高速化です。加えて撮影の前後にも注目しました。カメラを電源オンでいつも構えていればいいのでしょうが、例えば子供は突然いい表情をすることがあるので、起動時間といったトータルなところまで考えて、"ストレスフリーのデジタルカメラ"を目指してきました」

――"ストレスフリー"を達成するための技術的な背景として、真っ先に挙げられるポイントはどんなものでしょう?

西坂「やはり"EXILIM Engine HS"ですね。これはデュアルコアのCPUで、それぞれのCPUに画像処理の回路を持たせています。さらに、状況や処理に応じてハードウェアの回路を再構築して高速処理を行うリコンフィギュラルプロセッサを搭載し、合わせてEXILIM Engine HSと呼んでいます。これらの要素がかみあって、快速シャッターや高速な起動時間、つまりストレスフリーなカメラになっているのです。

1枚の写真を撮ったら、1つのCPUと画像処理回路が写真の生成や記録などの処理を行います。もう1つのCPUと画像処理回路は次の撮影に備えて行動しますので、効率よく次々と軽快にシャッターが切れるわけです」

ZR200のフロントカバーを外したところ

中央のチップが"EXILIM Engine HS"、その上部にある細長い2つのチップはメモリ

西坂「コンセプト的なことをいうと、"究極のストレスフリーカメラ"を目指すうえで、その1つが快速シャッターです。ただしそれだけではなくて、起動時間や終了時間もそうですし、撮影モードを切り替える手間といった使い勝手の面も、ストレスフリーにはとても大切です。"見たまま"を撮りたいのに、逆光だったりすると白とびや黒つぶれが大きくなってしまいます。そこでHDR撮影(*)があって、シャッターを切るだけで見たままの写真を撮れるので、この点もストレスフリーだと考えています。

さらにZR20およびZR200ではカメラが自動でシーンを分析して撮影してくれるので、HDR撮影を自動で使い分けられるようになっています。ユーザーさんはシャッターを押すだけで、キレイな写真が撮れるようにしています。トータル的なストレスフリーを目指しているのが、ZRシリーズの大きなコンセプトです」

*HDR(High Dynamic Range)機能
露出などの設定を変えて複数の写真を撮影し(ブラケティング撮影)、それらを合成して1枚の写真を出力する機能。暗部から明部までスムーズな階調を表現できる(ダイナミックレンジが広い)。逆光下などのコントラストが高いシーンでも、白とび/黒つぶれを押さえたキレイな写真が撮れる。

――そのZR20の機能というのは「プレミアムオート PRO」ですね。自分でも少し使ってみたのですが、近くのモノを撮るときに自動でマクロモードに切り替わることに、個人的に感動しました。

西坂「それだけではないですよ(笑)。逆光なら黒つぶれ判定や白とび判定、人物や緑、青空といったいろいろな自動判定と自動補正を行っています。ユーザーさんが撮影シーンを選ぶ必要がなくなったので、そこも快適さの1つだと考えています」

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