シャープは9月6日、洗濯機の新製品発表会を開催した。今回発表されたのは、「ES-TX910」と「ES-TX810」の2製品。縦型タイプの洗濯機で、同社独自の技術"プラズマクラスターイオン"機能が搭載されているのが特徴だ。

現在、洗濯機市場は、各社ドラム式タイプの製品の開発に力を入れるなか、同社はあえて縦型タイプの新製品を発売。同社健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部長の阪本実雄氏は「洗濯物をこすり合わせて汚れを落とす"もみ洗い"の力で、縦型はドラム式よりも洗浄力に強い」と説明。「ただし、パルセーターの回転で衣類の上下を入れ替えて乾燥する仕組みの縦型はどうしても引力に勝てず、ドラム式より乾燥機能が劣ってしまう」と述べ、今回、新製品の開発のポイントとして、"時短"と"シワの防止"を重点的に改良したと明かした。

「まだまだ縦型洗濯機の需要は高い。『時間がかかる』『シワになる』という縦型洗濯機の乾燥機能の弱点に取り組んだ」と語る、シャープ健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部長の阪本実雄氏

新製品の1つめの目玉機能は、"ハンガードライ"機能。洗濯機のフタ部分の内側にハンガーフックを設け、そこに専用のハンガーにかけて衣類を吊るして重点的に乾燥させる。ハンガーは2本分しかないが、シャツ2枚を約15分程度、上靴1組やシングルサイズの綿シーツ1枚を約60分で乾かすことができ、特定の衣類をスピーディーに乾かしたい時に非常に便利な機能だ。また、高濃度プラズマクラスターを噴射する"ハンガーリフレッシュ"機能により、水を使わず、高速で除菌と消臭も可能だ。

一方、省エネ視点では、洗濯槽から内フタをなくした乾燥システムに改良。本体外側のフタ部分を継ぎ目のないパッキン付きで温風を封じ込める二重フタや、槽内の温度が上昇するまでは内部循環し、温度を上げてから外部の乾燥空気を取り込むフラップなどを採用し、熱を逃さず効率よく乾燥できるようになった。

また、同社の縦型洗濯機では、従来から"穴なし槽"と呼ばれる独自の仕様が取り入れられているのも特長。洗濯槽に穴がないため、穴からの黒カビ菌の侵入や、外槽との間に隙間がないため水が内側から漏れず、ドラム式に比べて弱点のある節水に対しても強化が図られている。もちろん、穴なし槽の機構や、温風を外に逃がさないため、節電効果もある。 外観は、従来モデルと縦横幅や奥行きはほぼ同じだが、容量は拡大。従来、高さ44センチ、約66Lだった容量は、61センチ、89Lに拡がり、出し入れ口は内フタを排除したことにより、約25センチの投入口から32.5センチと約1.2倍になり、毛布などの大型洗濯物の出し入れもしやすくなった。

新製品の目玉機能"ハンガードライ"。フタの裏面に2つのハンガーフックを備え、吊るし干しをして洗濯機の中で効率よく乾かすという新しい発想だ

ハンガーは付属の2本の専用ハンガーを使う。通常のハンガーよりも若干横幅が小さ目の特殊なサイズだという

20年前から採用されているシャープ独自の"穴なし槽"。外側の槽への無駄な水漏れなどをなくし、縦型洗濯機としては高い節水と省エネ性能に貢献している

新旧パルセーターの比較。急水流を生み出すイルカの尾びれにヒントを得て設計された

旧機種の内側槽。今回この内フタをなくすことにより、ハンガーフック機構や間口を広くすることによる洗濯槽への出し入れのよさといった使い勝手も向上した

さらに、新たに改良された部品として"ドルフィンパル"を採用。高速遊泳をするイルカの尾びれに着想を得て開発されたパルセーター(洗濯槽の底部分にある脱水の際に使用する回転羽根)で、縦方向に強力な水流を生み出すことにより、従来よりも少ない数量での洗浄を可能にしたという。洗濯8キログラムの使用水量を比較した場合では、従来モデルの89Lから87Lに2Lの節水が実現されている他、洗浄力も回転水流と上下水流によるもみ洗いの相乗効果で強化されている。

その他、「高濃度プラズマクラスター7000」ユニットを搭載。運転終了後、フタを閉めると、本体上面後方の吹き出し口から、約2時間半にわたって自動でイオンを放出し、約2畳程度の空間の浮遊菌や雑菌、カビ菌などを分解・除去する、簡易プラズマクラスター発生機としての役割も果たす。

プラズマクラスターの吹き出し口。毎回の洗濯後に使った場合でも、ユニットは耐用年数の8年程度交換不要とのことだ

ES-TX910は、洗濯容量9キロ、乾燥4.5キロで予想実売価格は14万円前後、ES-TX810は洗濯容量8キロ、乾燥4.5キロで同13万円前後。外形寸法と重量はいずれも幅60センチ×奥行65センチ×高さ102.5センチ、43キロ。カラーはTX910がゴールド、TX810がピンクとシルバーの2色展開。

通常運転の目安時間は、TX910が洗濯のみの場合で約42分、乾燥までで約165分。TX810は、それぞれ36分、165分となっているほか、運転音は洗い運転時が37dbと35db、脱水時、乾燥時はともに38dbと44dbの仕様だ。

同社では「ドラム式にはドラム式の、縦型には縦型のそれぞれのメリットとデメリットがある。新製品では、洗浄力の高さという縦型の強みをより強化し、シワと乾燥効率という弱点をハンガードライ機能という新機能で克服し、少量だけどすぐに乾かしたいというニーズに応える製品開発を行った」と、縦型洗濯機の新たな需要の掘り起こしを目指した点を強調した。両機種ともに9月15日に発売する。