日本ヒューレット・パッカードの岡隆史・取締役副社長 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括

マイコミジャーナルでも既報のとおり、8月18日(米国時間)に行われた米Hewlett-Packardの四半期決算発表において、PSG事業に関して「webOS端末事業からの撤退」と「PSG事業全体の戦略的位置付けの見直し」について言及された。この発表を受けた報道に対し、[日本ヒューレット・パッカード]の岡隆史・取締役副社長 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括が「PC事業の事業分離はあくまでも全体の位置付けの見直しの中での選択肢のひとつで、PC事業をやめるというのは誤り」とコメントした。この発言は、24日に開催された同社昭島事業所の工場見学会の冒頭挨拶の中で語ったもの。

webOSは「ハードウェア販売事業の中止」

岡氏はまずwebOS端末事業について解説。「webOSをベースにしたタブレット・スマートフォンを7月1日から米国で販売していたが、その販売を打ち切り、ハードウェア販売事業からは撤退する。ただしwebOSのソフトウェアは様々な分野に応用ができるので、ソフトウェア事業としてwebOSを展開していこうというのには変わりなく、継続して評価していく」と語った。またこれに関連して、「webOSタブレット・スマートフォン端末からは撤退するが、HPがタブレット・スマートフォンのビジネスをやらない、というわけではない」という点を強調した。

どういった形でソフトウェア事業としてのwebOS事業を展開するのかという質問に対しては、ライセンシングによる他社からの端末発売、組み込みなどタブレット・スマートフォン以外の形でのHP製品への搭載などを可能性として挙げた。

事業分離は「ありうる」のであり「します」ではない

次にPSG事業全体の位置付け見直しについては、「HPはこれまで、『今後の成長分野であるタブレット・スマートフォン分野において、webOSデバイスで足がかりを作っていく』というメッセージを発信してきた。そのwebOSデバイス事業を打ち切るにあたっては、『それではこの先のHPのPCビジネスはどうなっていくのか』ということが問われることになる。それに対するHPの意思表明として、『HPはPC事業の位置付けについて再度見直し、1年から1年半かけて新たな成長の見通しを示す』と答えたもの」と語った。

「われわれもマーケットや報道の受け止められかたに驚いているが、PC事業のスピード、フレキシビリティをを増すために分社化や事業分離まで含めて踏み込んで検討するということが、HPがPCビジネスをやめるというふうに伝わってしまっている。これは誤りだということはご理解いただきたい」と語り、今回のPSG事業の戦略的位置付け見直し表明は、今後もHPのPCビジネスが大きく成長していくために大きな変革が必要であるとの意味であるとした。

また事業分離については、「『事業分離もありうる』のであり、『事業分離をします』ではない。1年から1年半というのは長い期間と思われるかもしれないが、それだけの期間をかけて、HPはPC事業を強化するために大きな変化を完了させるのだ、ということ」とした。

PC事業の収益性の高さを強調

そういった大きな変革を迫られる要因としてPC事業の収益性が持ち出されることについても、「昨年度は売上が3兆2,000億円で世界最大、利益率は5%で1,600億円の利益。直近の第3四半期の利益率はさらに向上して5.9%になっている。これだけの規模・利益率を実現している会社はPC業界になく、非常に健全」と反論。さらにシンクライアントやワークステーションといった高収益事業も持っていると付け加えた。そしてこのタイミングで事業位置付けの見直しを表明したことについては、「最大の成長分野と目されるタブレット・スマートフォン分野においてwebOS端末事業をやめていながら、PC事業全体は売上も利益率も順調ですというだけですませるわけにはいかない。HPは今の現状に満足しているわけではない、より強い会社にしていくという市場へのアナウンス」との見解を示した。

そして「個人的な意見」と前置きしながら、「事業分離もありうるし、引き続きHP内にとどまって事業を続けることもありうる。そういうあいまいなところにフラストレーションを感じられてしまうかもしれない。ただ、事業分離されたとしてもFortune 60レベルのマーケットリーダー企業のままで、PC事業に専念するぶん経営スピードは上がる。またもしHP内に残るとすれば、それは経営スピードやフレキシビリティの課題が解消されたうえでのことになる。いずれにしても、HPのPC事業はよくなるしかない、と認識している」と前向きな姿勢を強調した。

現時点での日本ヒューレット・パッカードとしての取り組みについては、「今後のHPのPSG事業のあり方について、1年以内にも発表することになる。今の時点では再構築戦略の決定を待っている状態だが、われわれとしてはビジネスを止めるのは得策ではないので、いまの体制で日々の改善をしていく。お客様にHPを選んでいただくメリットを提供することに専念する」と語った。