登壇した「AppBank」代表の村井智建氏

7月29日に開催された、毎日コミュニケーションズ主催のスマートフォンイベント「マイコミ スマートフォンアワード 2011」では、スマートフォン関係者や開発者らによる講演・セミナーが行われた。本稿では、GT-Agency代表取締役で、iPhone/iPadアプリ紹介サイト「AppBank」の代表でもある村井智建氏による「人がお金を払いたくなるアプリの法則」と題したセミナーの模様をお届けする。

セミナーは、日本でのiPhone市場の状況に関する検分から始まった。同氏はまず、2011年6月の時点でiPhoneの出荷数は累計で1億3,000万台を越えており、iPod TouchやiPadを含めると、端末の総出荷数は2億台くらいであろうと述べた。日本ではこれまでにおそらく500万台のiPhoneが出荷されているが、この秋に新機種が投入されるなら、来年の夏にはその数字は倍まで跳ね上がるだろうと続ける。日本国内の半数以上がiPhone 4のユーザーであるということと、最近では女性からも圧倒的な支持を受けていることを指摘し、新機種の投入は間違いなく成功を収めるだろうと明言した。

話題は、iPhone市場の状況から、App Storeの市場の動向の分析へ。現在、App Storeで販売されているアプリの総数は約50万本、世界中での累計ダウンロード数は150億以上であると報告し、海外市場ではゲームが圧倒的に強いということを力説した。また、App Storeで販売されているアプリはどれもクオリティが高く、低価格で提供されているので競争が非常に激しく、ライバルは世界中のディベロッパーとなるとのことだった。日本ではゲーム以外のSNSや写真アプリなどが検討しているという。

市場についての説明ののち、プラットフォームを理解するということについて解説した。ここではタッチパネルの操作性を追及することを中心に据えてコンテンツの制作にあたるべきだという考えを示した。

高機能かつデザイン性に優れたアプリの例として挙げられた「GoodReader」

ここで本題の「人がお金を払いたくなるアプリの法則」についてのレクチャーへと突入。まず始めのアドバイスとして「シンプルに作る」ことが提示された。機能を詰め込みすぎたアプリは、使われることなく削除される運命にあると言及したのち、1つのアプリに1つのセールスポイントを持たせることが重要だと伝えた。また、「GoodReader」を引き合いに、贅沢な機能を持たせるのなら、その倍、デザインを考えるべきだと強調した。

続いてのアドバイスは「必要とされているものを作る」ということだった。2010年のApp Storeでの無料アプリと有料アプリのトップ10を比較し、無料アプリの6位に「Bump」が、有料アプリの1位に「サクッと交換」がランクインしていることを挙げ、iPhoneには赤外線通信の機能がないことに加え、連絡先交換のアプリも少ないということがこの結果に繋がっているという持論を展開。開発者は突飛なアプリを作りたがる傾向にあるが、実は本来必要とされるアプリがあまりないという事実に気づいて欲しいと語気を強めた。

似たような機能を持ちながらともに高い評価を得ているという「Bump」(左)と「サクッと交換」

iPhoneアプリらしいUIを備えたアプリということで紹介された「大辞林」

次に「iPhoneらしいものを作る」ということについて講じた。「大辞林」を事例に、ユーザーはどういうインターフェースや機能に慣れ親しんでいるのかを知ることが肝要であるとした。

さらに「使ってもらえるサービスを作る」ことに関して詳説した。近頃では"ソーシャル"をテーマにしたサービスやアプリの話題が多いが、そうしたとき、回線の重さが問題になることに触れ、サービスを提供する際の快適度を意識すべきだと主張した。

話題がマーケティングに移ると、トップ25に入った時点でダウンロード数は桁が変わるという事実からして、ランキングがすべてであるという見解を示した。いかにして25位にして入るかということが現状のマーケティングであり、そのためにできることは、どのカテゴリーを攻めるのか研究することと、メディアにレビューを依頼すること、広告を打つこと、セールなど販売価格をマネージメントすることの4点に集約されると説いた。

最後は、iPhoneアプリ開発者は同時に宣伝マンであるということを自覚すべきだと訴え、AppBankも他のブログも一般的なユーザーと同じで、「このアプリすごいよ」「あのアプリ、もう使った?」と思わせるアプリをレビューしたくなるのであって、自ら進んで宣伝活動に勤しむようでないと、どんなに良いアプリを作っても売れない、と熱弁を奮い、約1時間のセミナーを締めくくった。