デジタルアーツは20日、Android搭載端末向けのフィルタリングアプリ「i-フィルター for Android」を発表した。21日からAndroid Marketでベータ版を無償公開し、10月1日から正式版を発売する予定。正式版は月額課金になる見込みで、価格は現在検討中だという。対応OSはAndroid 2.1/2.2/2/3。ただしAndroid 2.1は8月初旬の対応だ。
i-フィルターは、PCやテレビ、ゲーム機など、幅広いインターネット対応端末で利用されているフィルタリングソフト。違法・有害サイトなどの情報を集めた3億5,000万件以上のデータベースや長年培ったノウハウを生かして、子供などが危険な情報にアクセスしないようにするフィルタリング機能を提供してきた。
今回、新たに開発されたのはAndroid OSを搭載したスマートフォンなどに対応したフィルタリングアプリ。専用のWebブラウザを利用してアクセスしたWebサイトの情報から、不適切なサイトの場合はアクセスをブロックできるほか、インストールしてある各種アプリの利用を制限することも可能。標準のブラウザの利用を制限し、専用ブラウザだけでアクセスさせることでフィルタリングを実現しており、必要に応じてほかのアプリの利用を制限することで、子供が危険な情報にアクセスしないようにすることができる。
各種設定は、PCやスマートフォンなどのWebブラウザ経由で行え、i-フィルターをインストールした端末に触れる必要はない。設定では、子供の年齢に応じたフィルタリング強度を「小学生」「中学生」「高校生」などで設定できるほか、67カテゴリに分類されたサイトを、カテゴリごとに利用制限・許可できる。個別にアクセスできるサイト、できないサイトを設定することが可能。
インストールされているアプリに対しては、個別に利用を制限・許可する設定ができ、Android Marketなどのマーケットアプリの利用制限もできるので、新たなアプリを子供がダウンロードしないように設定することも可能だ。
子供の利用状況を確認するアクセスログ機能も搭載。専用ブラウザでアクセスしたサイトのURL、検索された語句のリストなども確認できる。カテゴリごとのアクセスランキングのグラフ表示など、分かりやすいグラフィカルな表示機能も備えている。利用時間の制限機能も備え、夜はインターネット利用をブロックしたり、1日の利用時間の設定も可能。1日1回、利用時間やブロックしたサイト数などの利用状況をメールで保護者に送付することもできる。
ブロックされたサイトに対しても、子供がアクセス申請を行うことができるので、勉強の調べ物や学校の掲示板など、必要に応じてアクセス許可を与える機能も搭載。アクセス申請では子供がその理由を書き込んで送るため、親子のコミュニケーションにも役立つとしている。ブロックされたことを表示する画面では、親がカスタマイズしたメッセージを表示することもできる。
すべての設定やログの確認、アクセス許可などの操作は同社サーバーにアクセスして行うため、保護者側はリモートから設定を行うことができる。保護者が会社に言っていたり、外出したりしていても、申請や確認をいつでもどこでも行えることから、同社では「いつでも、どこでも見守る安心」(経営企画室コンシューマ担当・越智辰夫氏)を実現できるとしている。
当初は、「多くの人に使ってもらいたい」(同)ことから、無償のベータ版として公開。ベータ版の利用期間は9月末までで、10月1日からは正式版としてリリースする。当初は動作検証のためAndroid 2.1は非対応扱いだが、8月初旬にも対応する。Android 3.0への対応も進めるほか、すでにiOS版もアップルのApp Storeに申請中だという。
現在同社では、PC、テレビ、ゲーム機などにもi-フィルターを提供しているが、現時点では相互の連携はなく、例えばPC用i-フィルターユーザーがAndroid版を購入しても、別々の管理画面を使わなくてはならない。同社代表取締役社長の道具登志夫氏は、「管理画面は同じクラウド環境にあるので、統合していく方向で検討している」と話す。月額料金は、テレビやゲーム機向けは315円、PC版は350円であり、同等の価格帯になる見込み。こちらも、今後PC版とAndroid版のセット価格のような料金体系を検討していくそうだ。
各種調査では、国内のスマートフォン市場は今年度から来年度にかけて大きく伸び、2015年度には3,056万台に達すると予測され、その中でもAndroidの伸びは大きく、アプリの登録数も、Android Marketで40万以上(2011年6月)に達しているとして、越智氏は、「App Storeよりも伸びている」と指摘する。
そうした中、ゲームや赤外線、音楽など、さまざまな機能を備えたスマートフォンが登場してきており、若年層にも利用され始めている。越智氏によれば、スマートフォンを子ども用に購入する保護者が7%にまで増えている、という。
ただ、多くの子供がモバイル端末でインターネットを使っており、違法・有害サイトで被害に巻き込まれる例も増えてきている。通常のフィルタリングではブロックされない非出会い系サイトで事件に巻き込まれる児童が増加傾向にあり、警察庁の統計では、そうした被害児童のフィルタリング利用率は1%程度だったという。フィルタリングを設定しない理由を保護者に尋ねると、「子供を信頼しているから」「うちの子に限って」という意見が多いという。
若年層に人気の機能を盛り込むことで、スマートフォンへの人気が高まっている |
有害・違法情報が伸びているほか、非出会い系サイトでの被害児童も増加。「インターネットを通じた犯罪が巧妙化してきている」(越智氏)という |
ただ、携帯でのインターネット利用について、96.7%の子供が利用していると答えたのに対し、子供がインターネットを利用していると答えた親は79%にとどまるなど、親の目が行き届いていない実態を越智氏は指摘する。
従来の携帯電話は、未成年に大してフィルタリングの設定義務を課しているが、スマートフォンや無線LAN端末に対する設定も検討されており、同社では、こうした現状を踏まえてi-フィルターのAndroid版を開発。安心、安全を届けたい、としている。なお、無線LANのみの端末もあることから、同社では端末メーカーとの連携も視野に入れるほか、今後法人向けも開発し、複数アカウントのサポートもしていきたい考えだ。