STMicroelectronicsとシンガポールVeredus Laboratoriesは、O157(志賀毒素産生性大腸菌)など、10~12種類の食中毒病原体を1回の検査で検出できるラボ・オン・チップ・アプリケーション「VereFoodborne」の開発・導入に成功したことを発表した。

STとVeredusが共同開発したラボ・オン・チップ・アプリケーション「VereFoodborne」

STのラボ・オン・チップ・プラットフォームに基づく同ソリューションは、O157およびO104を含む病原性大腸菌、サルモネラ菌、リステリア菌、カンピロバクター菌など、食中毒病原体を検出・識別する携帯型ラボ・オン・チップ・アプリケーションで、食中毒病原体の遺伝子の複数セグメントを同時に検出するため、バクテリアとウイルスの識別において、他の検査方法に比べ、高い信頼性を実現しているという。

全ての主要食中毒病原体を1回の検査で高速検出することが可能な分子診断検査で、2時間以内に感染に関する病原体の遺伝子情報を取得することが可能だという。従来の方法では、検査結果の特定まで数日から数週間の時間が必要であったが、同ソリューションを活用すると、チップ上のマイクロアレイが、1回の検査で複数の病原体の検出を可能にするため、従来のラボ環境がなくても、必要な時に必要な検査ができるようになるという。

そのため、保健機関や食品業界にとって、食品の安全モニタや食中毒の発生状況を把握するためのツールとなることが期待され、保健機関は、食中毒の発生調査を迅速に行うことができるようになり、病原体の早期封じ込めによる感染拡大を防ぐことへ繋げることが可能となる。また、食中毒の発生調査において、出荷された農作物などを疑わしいものとして誤って特定したとしても、早い段階で隔離を解除し、不要なコストと食品の損傷を避けることができるようになるという。

一方、大手食品会社では、前処理と後処理ですべての成分を精力的に検査しているが、検査完了までに長時間を要する従来の方法では、保存期限が刻々と迫る中、傷みやすい成分を長時間にわたって貯蔵する必要がある。また、研究所に委託することが多い中小企業も、同ソリューションを使用すれば、独自の検査をさらに低コストかつ短時間で実施できるようになるという。