Texas Instruments(TI)の日本法人テキサス・インスツルメンツは6月13日、ポータブル・コンシューマ・エレクトロニクス機器向けに、非接触温度計測機能を搭載した1チップの受動型赤外線(IR)MEMS温度センサ「TMP006」を発表した。すでに量産出荷を開始しており、1000個受注時の単価は1.50ドルとしている。

既存のIRサーモパイルセンサは、成熟市場ながらデバイスサイズが大きく、価格も1000~3000円と高いため、産業機器がメインで携帯機器に搭載することは難しかった。同製品ははじめから携帯機器に搭載することを前提に開発されたもので、MEMSサーモパイルセンサ、シグナル・コンディショニング回路、16ビットΔΣA/Dコンバータ(ADC)、ローカル温度センサ、電圧リファレンスなどのディスクリート回路を1.6mm×1.6mmの8ボールDSBGA(WCSP)パッケージに集積しており、既存ソリューションと比べて95%の小型化を実現しているほか、ADCなどを集積しているため、後段の回路を構成する必要もなくなっている。

TMP006の概要

また、ローカルの温度センサやADCなどを含め、全般的に低消費電力化を図ることで、消費電力も同90%以上の低減を実現しており、静止電流で240μA、シャットダウン電流1μAとしているほか、温度範囲-40℃~+125℃で、ローカルセンサの精度が±0.5℃(Typ)、受動型IRセンサの精度が±1℃(Typ)を実現している。

TMP006のブロック図

同IRセンサの動作原理は、物体から放射される赤外線の熱エネルギーをデバイスのサーモパイル上に集約、その熱エネルギーを電圧に変換して測定するというもの。「小型、安価、低消費電力ということで、多くのカスタマからさまざまなシーンで利用したいという話が出てきている。我々の予想もつかないような使い方も多々考えていると聞いている」(同社営業・技術本部 マーケティング応用技術統括部 アナログマーケティング シグナルチェーンソリューション リーダーの関根宏昭氏)としており、さまざまなシーンでの活用を見込む。

TMP006のイメージ図。MEMSで空間を作成し、そこに独自技術のサーモパイルを設置し、底部のローカルセンサとの温度差をΔTとして温度計測を行う

実際に、同社で実際にノートPCを用いて測定を行ったところ、リファレンスに用いた温度計とほぼ同じ値を実現したという。こうした携帯機器の問題の1つにケース温度の上昇による低温火傷があるが、プロセッサの上部にワイヤを介して設置し、温度を測定することは、配線の取り回しなどの課題もあり、現状の温度センサでは難しい。その代替手法として、プロセッサの周辺にそうしたセンサを配置し、補正を行い計測していたが、同製品を用いる場合、プロセッサ周辺に配置しても、120°の視野角で温度を計測することができるほか、パッケージに工夫を施し、はんだボールから熱を逃がしやすい作りを採用することで、温度計測を精度良くできるようになっており、リファレンスと同程度の測定温度を達成できたと同社では説明している。

ラップトップ(ノート)PCを用いた温度計測実験。リファレンスの温度計の示す値とほぼ同値の計測結果となったという

なお、国内でもすでに同製品を用いた携帯機器やスマートフォンなどの開発が始まっているという。

実際のデモ基板。右側のバーコードの右にあるチップがTMP006。非接触型なので、パッケージ上部のセンサ部分に触れてしまうと、汚れが生じてしまうため、推奨フィルタなどが用意されているという